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コラム 7時間前

“次のコモ”になるのか。ヴェネツィアFCが描く壮大な成長戦略、新スタジアムと女性会長の野望【コラム】

ヴェネツィアFC
セリエB優勝とセリエA昇格を成し遂げたヴェネツィアFC【写真:Getty Images】



 ヴェネツィアFCは、ただセリエAへ戻ってきたわけではない。新スタジアム建設、女性会長の就任、若手育成、そしてクラブの長期戦略――。“水の都”のクラブは今、コモ1907にも通じる野心的プロジェクトを進めている。2年ぶりのセリエA復帰を果たしたヴェネツィアFCは、なぜ“次の主役”になり得るのか。その裏側を追った。(文:佐藤徳和)[1/2ページ]

ヴェネツィアFCが再びセリエAの舞台へ

 ヴェネツィアFCが、2年ぶりのセリエA復帰を決めた。

 5月1日に開催されたセリエB第37節、アウェイでのスペツィア・カルチョ戦で2-2と引き分け、セリエA昇格を勝ち取ると、その7日後、スタディオ・ピエル・ルイージ・ペンツォで行われたパレルモFC戦に2-0と勝利を収め、3度目のセリエB優勝を成し遂げた。

 2020年以降、今回で3度目のセリエA昇格となる。一度降格すると“底なし沼”のように抜け出せなくなるセリエBから、この7年で3度もトップリーグ返り咲きを果たしているのは特筆すべき点だ。

 しかも今回はセリエB優勝という形での昇格。クラブの野心を十分に感じさせる結果と言える。

 序盤戦の戦いは、決して称賛できるものではなかった。11試合を終えて4勝4分け3敗と6位まで順位を下げていた。

 しかし、第12節からの12試合を11勝1分けと驚異的な追い上げを果たし、第20節には1位に浮上。第24節のモデナFC戦に敗れはしたものの、以降は最後まで首位の座を明け渡すことはなかった。

 今季のヴェネツィアFCの指揮を執ったのは、現役時代にミランで活躍したジョヴァンニ・ストロッパだ。そのストロッパが3日、イタリア紙『ラ・ガッゼッタ・デッロ・スポルト』のインタビューに答えている。


「ヴェネツィアに来たのは…」

「我々監督は選ばれる立場だ。しかし、チームを引き受けるかどうかを決めるのは我々監督自身だ。2024年夏にクレモネーゼに残ったことは、私に確信を与えてくれた。皆がそう思っていたわけではなかったが。ヴェネツィアに来たのは、フィリッポ・アントネッリSDが私を猛烈に口説いたからだ。私は、『セリエAから降格したチームの戦力を維持するならば』という条件だけを受け入れるとして、『スィ(はい)』と答えた。そして実際、その通りになったんだ」

 アントネッリSDとは、ストロッパが2度目のセリエA昇格を果たしたACモンツァ時代にもコンビを組んでいる。

「我々は一瞬で理解し合える。視線ひとつで十分だ。彼は完璧なディレクターだ。落ち着きを伝えてくれる。だから全員が緊張することなく、超高速で働くことができるんだ」

 指揮官として、セリエBからセリエAへの昇格は、自身4度目。昨季のクレモネーゼに続く、2年連続昇格という偉業だったが、セリエB制覇は58歳のストロッパにとっても初めての快挙である。彼が指揮したチームにとって、“最強”とも言えるのではないか。

「私はシーズン開幕時から言っていたが、最後には首位に立てると確信していた。いずれにせよ、私たちは戦えると思っていた。このチームは完全であり、バランスがとれ、技術面でも精神面でも非常に大きなクオリティーを備えている」と評した。

 クレモネーゼをセリエA昇格に導いた昨季、シーズン終了後にストロッパはまさかの決断を下した。クラブとの契約を見送り、退任の運びとなったのだ。

 その理由について、ストロッパは昨年7月にこう答えている。


ヴェネツィアFCの壮大な成長戦略とは?

「落胆はしていない。今は自分がヴェネツィアFCで評価されていると感じているし、これは私のキャリアにおける重要なステップだと思う。クレモーナでは特別なことを成し遂げたと思っているし、それは数字が証明している。ただ、人間関係の面では、ある人たちにはもう少し何かを期待していた。だが、プロの世界としては理解できる。契約は満了していたし、更新が当然だったわけでもない」

 具体的な退任の理由については明かされていないが、金銭的な面に不満を持ったか、あるいは、セリエAを戦う上で補強について納得できないものであったのだろうと推測できる。

 それでは、ヴェネツィアFCを昇格に導いた今季も退任の可能性はあるのだろうか。

「その話はやめよう。今日、私にとって、ヴェネツィアFCはあまりにも大きな価値があるクラブだ。(他のクラブと)話し合いの席に着くことすらない」と明言。退団することはあり得ないと明言している。

 ヴェネツィアFCには、クレモネーゼにはなかった壮大な成長戦略がみられる。ストロッパが「私にとってあまりにも大きな価値があるクラブ」と謙遜するのも頷けるものだ。

 ヴェネツィア市が、新スタジアムの建設に着手しており、2026年5月現在、施設はすでにその輪郭を現し始めている。完成は2027年10月に予定されており、その時をもってクラブはピエル・ルイージ・ペンツォ・スタジアムに別れを告げることとなる。

 現スタジアムは100年以上にわたって使用されてきた歴史ある競技場であり、ジェノヴァのルイージ・フェッラーリスに次いでイタリアで2番目に古い。魚の形に例えられるヴェネツィア本島の尾びれの場所に位置するこのスタジアムには、水上バス「ヴァポレット」でもアクセス可能だ。

 そんな、世界で唯一無二のスタジアムに別れを告げるのはいささか寂しさしかないが、これも時代の流れだ。

 新スタジアムは、現在のスタジアムがあるヴェネツィア本島を離れ、イタリア本土のメストレ地区に位置するテッセーラに建設中だ。球技専用スタジアムに加え、アリーナも建設中。後者は、バスケットボールのセリエAに所属するレイエル・ヴェネツィア・メストレの本拠地となる。

 双方共に、ヴェネツィア市による建設で、市が所有するが、ヴェネツィアFCとレイエルが施設運営権を40年間にわたり持つこととなる。球技場のキャパシティーは1万8500人。サッカー以外にもラグビーやコンサートの開催も可能だ。

 ドイツのミュンヘンにあるオリンピアパークに着想を得たこの「スポーツパーク」は、植林された緑に囲まれ、コンベンションセンター、医療・理学療法センター、ジム、クラブミュージアムも併設予定となっている。“水の都”、ヴェネツィアにおける新たな“観光名所”となる可能性を秘めたプロジェクトだ。

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