
ジェフ千葉でプレーする椿直起【写真:Getty Images】
「あのコールを聞くためにリハビリをやってきた」。ジェフユナイテッド千葉のMF椿直起を突き動かしてきたのは、スタジアムに響くサポーターの声だった。右足の手術を経て復帰した今シーズン、明治安田J1百年構想リーグ最終戦で敗れてもなお顔を上げる25歳が、サポーターと「喜びを分かち合う」ために次への一歩を踏み出す。(取材・文:石田達也)[1/2ページ]
明治安田J1百年構想リーグ プレーオフラウンド第2戦
ジェフユナイテッド千葉 1-2 アビスパ福岡
フクダ電子アリーナ
苦しかった椿直起の負傷離脱

J1昇格プレーオフをピッチ外で見守った椿直起【写真:Getty Images】
明治安田J1百年構想リーグの最終順位を決めるプレーオフラウンド第1戦を2-2で終え、決着を付ける大詰めの第2戦でMF椿直起が今シーズン初先発を飾り、右足から放たれたクロスがPKにつながる起点となった。
それはアビスパ福岡戦の27分のことだった。FKのこぼれ球を拾ったDF髙橋壱晟がクロスを上げると、福岡の守備陣がクリアする。ボールを回収した椿はドリブルで運び、相手3選手が迫ると判断良く鋭いクロスを送った。
ゴール前での混戦のなか、FW呉屋大翔がボレーシュートを狙う。このときに相手のハンドリングがVARを介して確認され、32分に背番号「9」がみずからしっかりと右足で決めて先制点を奪った。
椿は「得点シーンに関しては、そこにクロスを入れることで何かが起きると思いましたし、得点につながったことは良かったなと思っています」と振り返った。
昨シーズンは、明治安田J2リーグ38試合4得点5アシストを残し、クラブの17年ぶりのJ1昇格に貢献する活躍を見せたが、第38節FC今治戦(5-0)の前半に負傷しハーフタイムでベンチに下がった。
チームはJ1昇格プレーオフを制したが、椿はPOには不出場。その後のクラブからのリリースによると右足関節内果副骨障害、右足関節インピンジメント症候群、右距骨軟骨損傷という深刻な診断が下されていた。
「あのコールを…」

ジェフ千葉のサポーター【写真:Getty Images】
今年1月に手術を受け、懸命なリハビリやコンディション調整を続けた結果、百年構想リーグ第11節東京ヴェルディ戦で途中出場を果たし、チームの戦いを支えてきた。
椿は「J1の舞台に立つために昨シーズンを戦って、それからリハビリもしてきました。まずは、この舞台に立てたことでホッとしているところはあります」と口にする。
そして復帰までの道のりに対して、千葉の仲間たちに心からの謝意を示した。
「チームメイトには『うらやましい』という気持ちが強かったですし、自分も早くピッチに立ちたいという気持ちでした。メディカルスタッフ、ドクターもそうですけど、自分のために色々と尽力してくれた皆さんに感謝したいと思っています」
ケガで離脱を強いられた中で、復帰への原動力になったのはサポーターの声援だった。
「あのコールを聞くためにリハビリをやってきたと言っても過言ではないくらい自分にとっては大事なもので、今度は自分がそれに応えられるように、やっていきたいなと思っています」
本来のトップコンディションからは、まだ遠く、ゲーム感やスタミナは中々、戻りきらない。
それでも実戦を経て昨シーズンのような最高のパフォーマンスを取り戻すため、「チームのために攻撃守備で100%の力で走る」と思いの強さを示す。
この日の千葉は[4-4-2]の布陣を敷き、椿は右SHでスタートすると、ライン際に張るだけでなく、ひとつ内側に入り2トップの呉屋の近くにポジションを取ってプレーする。
「チームに与えられたタスクがあった中でも…」

ジェフ千葉対アビスパ福岡の模様【写真:Getty Images】
「内側に絞ってプレーすることや柔軟に動くところはやっぱり自分の中でも初めてで、チームとして今、チャレンジしているところです。そこに対しては前向きに捉えています。
ただチームに与えられたタスクがあった中でも、自分の良さを出さなければいけないし、自分がもっとトレーニングをしなければいけない」
椿は反省を口にするが、試合数をこなし、慣れていくことでスムーズな展開にもなるだろうし、求める理想にも近づくだろう。
そうして自らに要求し続けるからこそ高見に届く近道になるに違いない。そこに持ち味であるキレのあるドリブルやカットインからのシュートシーンを増やすことで、さらに輝く存在になるだろう。
好調な滑り出しを見せていた千葉だが、後半に流れが一変する。
千葉の強度が落ち、福岡のプレスが機能し始めると最終ライン、中盤、前線がつながり切れず押し込まれる展開になると、57分に同点弾を撃ち込まれ、続く68分には逆転弾を射抜かれた。
千葉は最後までゴールを狙うが1-2のままタイムアップ。2戦合計で3-4となり最終順位20位で終わった。
17年ぶりのJ1挑戦は、悔しい思いも苦い経験も貴重な財産になったからこそ、椿は次のように言う。