元サッカー日本代表の岩政大樹【写真:三桂】
サッカー日本代表は日本時間6月15日、FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)グループリーグF組第1節でオランダ代表と対戦し、2-2と貴重な勝ち点1を手にした。この一戦について、試合後、元サッカー日本代表で2010年の南アフリカW杯のメンバーだった岩政大樹氏に話を聞いた。(取材・文:竹中愛美)[1/2ページ]
「追いついた勝ち点1」は大きな収穫。2得点がもたらす自信

W杯初出場でゴールを決めた中村敬斗【写真:田中伸弥】
ーーまず、率直に今回のオランダ戦を振り返ってどのような印象をお持ちでしょうか?
「勝ち点1というのも、やはりチーム全体で最低限の目標、鎌田(大地)も言ってましたけど、おそらく試合前からみんなで話していたと思いますから、その意味では最低限の目標を達成したと思います。
あとは追いついた勝ち点1というのも、追いつかれた勝ち点1とは違うので、次節に向かうムードという面でもプラスですし、さらに2得点取れたのは非常に大きい勝ち点1かなと思いますね」
ーー後半は日本が盛り返して、追いついてというところでは、勝利に近い印象も受けました。
「次はチュニジア戦じゃないですか。停滞感というか、得点が取れずに、例えば、0-0で引き分けとかだと、そんなにポジティブじゃないと思うんですけど、2得点取って、チュニジア戦になったときに、これから2試合下がってくるような相手になったときにも、かなり自信を持って試合に臨めると思うんですよ。
試合をやっている間も得点が取れるムードがある。それってサッカーにおいてはすごく大事。得点を取り始めるとケチャップとか、ケチャドバとか言いますけど、取れ始めると、どんどん取れていく感じがするので、今後の試合のためにも景気づけがついたかなと思います」
ーーなるほど、しかもこの2得点を取った選手が攻撃の選手というところは大きい。中村敬斗選手がきょうは左のウイングで先発でしたが、左サイドは三笘薫選手や南野拓実選手が負傷で、少し不安視する声もありました。その中で結果が出たのも大きいでしょうか?
「うん、それは大きいです、まさに。やっぱりW杯って、その大会を機にスターになっていく選手が何人かいると思うんですけど、その1人として期待されていたのが中村です。これまで牽引してきた選手たちが怪我で離脱した中で、新世代のスターが結果を出したのは、日本のサッカーにとっても大きいですし、それが流れや勢いをもたらしたというふうには思います」
「巨大な敵だと思っていない」日本代表に感じた落ち着きと成長
日本代表は、2度のリードを許しながらも追いついてみせた【写真:Getty Images】
ーー特に岩政さんから見ていて、光っていたプレーだったり、良かったシーンは、挙げるとしたらどんなシーンになりますか?
「全体の意思統一がとれていたことですかね。前半はある程度、もう少し本当はプレスにいけるイメージでいたんだと思うんですけど。うまくかからなくても、あんまりオープンな展開に持ち込まないという共通認識があって。それをオランダも望んだのもあったと思うんですけど、それによって、前半をやり過ごして、後半になったときに相手がギアを上げたところで少し戸惑って失点してしまいました。
けど、そこから自分たちでさらに流れを持ってこれる。さらに、得点まで取れるのが今の日本代表の、選手たちの自信だろうなと思います。オランダは強敵ですけど、別に巨大な敵だと思ってない感じがすごくするので。取られたなら取り返そうっていう感じで、すぐ迎えるのはやっぱり力をつけてきたなという印象で、そこが一番大きいんじゃないですかね」
ーー確かにプレーを見ていても、結構落ち着いているというか、あまり焦っていない印象を受けました。交代の選手も含めて、共通認識があったということでしょうか?
「言葉で共通認識を持とうと言ったって、経験値と自信というか、それまでの経験をもとにした自信がないと、持てないもの。それは、近年これだけの選手がヨーロッパに行って、それぞれがそのチームで自分の立ち位置を確立してきたから。
日常の中で世界トップレベルとやりあって、確立してきた自信みたいなものが生み出してる落ち着きは、やっぱり全然違いましたよね、これまでと」
警戒された日本が勝ち取った勝ち点1。「歴史のステップとしては進んだ」
前回のカタール大会では強豪・ドイツ代表やスペイン代表を撃破した日本代表【写真:Getty Images】
ーーなるほど。前回の2022年カタールW杯のとき、ドイツやスペインには先制を許しましたが、逆転しました。今回は逆転まではなりませんでしたが、2点取られても、2度追いついたのは自信になるのではないでしょうか?
「特に今回は前回のドイツ、スペイン戦とはちょっと僕は違うと思ってて。オランダはかなり今回日本を警戒しているんですよね。日本も例えば、格下とやるときに『警戒しようぜ』と言いながら、戦い方をわざわざ相手に合わせてやることはなくて、『いつも通りに入ろうぜ』と言ってやるわけで。
前回のドイツも前半ある程度圧倒して、『日本こんなもんかな』というところに、日本が少し戦い方を変えたことが功を奏して、勝ちに持っていったのは事実だと思う。でも、そこから強豪国の仲間入りをしようとしたら、強豪国に警戒されたとしても、さらに対策されたとしても、勝ち点を取っていく、勝っていかないといけない。
そこのフェーズはまた全然違うというか、ジャイアントキリングするのと、強豪同士で戦って勝つのはサッカーでは全く違うので。今回のオランダは日本に対して対策をしてきて、日本のショートカウンターをさせないようなロングボールの使い方だったり、日本がボールを持ったときに引き込んで、スペースを与えないような守備をするみたいなところも準備してきた。
警戒してきた相手に対して、引き分けに持ち込んだのは、僕は全然価値が違うと思っています。前回は勝ち点3だったかもしれませんけど、今回の勝ち点1の方が歴史のステップとしては進んだというふうに僕は思います」