2006年にバロンドールを獲得した最後のDFファビオ・カンナヴァーロが率いるウズベキスタン代表が、ついにワールドカップの舞台へ立つ。1998年大会から挑戦を続けながら届かなかった悲願を、8度目の予選挑戦で実現。国を挙げた育成改革によって急成長を遂げた“ホワイト・ウルブズ”は、初の世界舞台でどのような足跡を残すのか。世界王者の知見を携えた新指揮官とともに挑む歴史的な戦いを追う。(文:佐藤徳和)[1/2ページ]
8度目の挑戦で掴んだ悲願のW杯切符
今だけお得なキャンペーン実施中のDAZNで視聴する[PR]
2006年にバロンドールを獲得した最後のDFファビオ・カンナヴァーロが指揮するウズベキスタン代表は8日、オランダ代表とFIFAワールドカップ2026(北中米W杯)を前にした最後のテストマッチを行い1-2と敗れた。ニューヨークの5000人収容のスタジアム、アイカーンで行われた一戦、後半アディショナルタイムにイランのペルセポリスFCでプレーするイーゴル・セルゲーエフが同点弾を奪って意地を見せたが、終始、試合の主導権を握られ、幾度となく決定機を許した。
オランダの攻撃陣が好機を確実に仕留めていれば、さらに大差がついていても不思議ではなかった。結局、同点直後に再びPKを献上。これを決められ、1-2と競り負けた。
ソビエト連邦崩壊後の1991年に独立したウズベキスタンは、初めて参加した国際大会である1994年広島アジア大会で優勝し、アジアに衝撃をもたらした。日本代表が準々決勝で韓国代表に2-3と敗れ、パウロ・ロベルト・ファルカン監督が解任されたあの大会である。
準決勝ではその韓国に1-0で勝利し、決勝では中国代表を4-2で破った。だが、W杯出場への道は険しかった。
ウズベキスタンは、1998年大会からW杯予選に参戦してきたが、8度目の挑戦で悲願の本大会出場権獲得となった。今大会予選ではアジアの強豪イラン代表と4度対戦して全て引き分け、グループAの2位で突破した。
2023年に創設された中央アジア王者を決めるCAFAネイションズカップでは、第1回大会の決勝でイランに0-1で敗れたものの、2025年大会では延長戦の末に1-0で勝利し、雪辱を果たすとともに初優勝を飾った。2000年AFCアジアカップで日本代表に1-8の惨敗を喫した当時の面影はもはやない。
国を挙げた強化策。急成長を遂げた中央アジアの雄
ウズベキスタン・オリンピック委員会の第一副会長であるオタベク・ウマロフが、イギリス通信社『ロイター』のインタビューにこう語っている。
「ウズベキスタンのW杯出場権獲得は、サッカーだけでなく、わが国のスポーツと国民意識全体にとって画期的な瞬間であった。中央アジアで初めてワールドカップ出場を果たした国として、この偉業は3800万人の国民を誇りと喜びで一つにした」
ウズベキスタンでは国を挙げて、サッカーの強化が進められている。約1万5000の学校のグラウンドが改修され、6万5000人以上の若手選手の育成を支援する専門サッカースクールのネットワークも整備された。
さらに、国内最大となる収容人数5万5000人規模の新スタジアム建設計画も進められているのだ。成果は如実に現れている。
大きな結果を出したのは、フル代表だけではない。世代別代表でも実績を残している。
U-23では、2024年パリ・オリンピックに男子チームが初出場。U23アジアカップを兼ねたアジア予選では、快進撃を見せ、決勝に進出。ファイナルでは、日本を苦しめ、後半アディショナルタイムに山田楓喜に決勝点を許して準優勝に終わったが、大会を通じて失点はこの1点という堅守が光った。パリ五輪本大会グループステージでは、スペイン代表とエジプト代表に敗れたが、いずれも1点差での惜敗。
ドミニカ共和国代表との最終戦では、1-1と引き分け、初の勝ち点も獲得した。そして、U-20はアジアカップ2023で優勝。準々決勝でオーストラリア代表を、準決勝では韓国をいずれもPK戦で退け、決勝では、準決勝で日本を破って勝ち上がってきたイラクに1-0と勝利し、アジアの頂点に立ったのだ
悲願達成後の決断。世界王者カンナヴァーロ招聘の理由
各年代の代表が結果を出し、そしてA代表がW杯出場権獲得の悲願を成し遂げた。2025年6月6日、W杯アジア最終予選第9節でアラブ首長国連邦と引き分け、W杯初出場の切符を掴んだ。
実はこの時、ウズベキスタン代表の指揮を執っていたのは、カンナヴァーロではなく、ウズベキスタン人のティムル・カパーゼであった。
ホワイト・ウルブズ(ウズベキスタン代表の愛称)のレジェンドで、現役時代には歴代2位の119試合のキャップ数を誇る。U-23代表を率い、パリ五輪に導いたのもこのカパーゼであった。
しかし、10月6日、ウズベキスタン・サッカー協会は、このウズベキスタン人監督に代えて、カンナヴァーロを迎えることを表明。ファビオの招聘は、母国イタリアでも、驚きをもって報じられた。
協会は、「著名な指導者であり、その世代を代表する最高のディフェンダーの一人で、ワールドカップに3度出場し、FIFAワールドカップ2006優勝メンバーでもあるファビオ・カンナヴァーロ氏と契約を締結した。イタリア人指揮官は、アメリカ、カナダ、メキシコで開催されるワールドカップに向けた準備期間において、我々の代表チームを率いることになる」と発表した。
協会は世界を知り、世界で名が知られる指揮官を欲したのだ。かくして、DFとして最後のバロンドーラーであるカンナヴァーロを新監督に迎え入れることとなった。
そのカンナヴァーロが今年5月、イタリア・スポーツ紙『ラ・ガッゼッタ・デッロ・スポルト』のインタビューに答え、ウズベキスタン代表の印象について語っている。
「ウズベキスタンの選手といることは楽しいよ。私が提案することを何でもスポンジのように吸収してくれる。誰も文句を言わないし、よくトレーニングする。常に学ぼうという姿勢がある」
