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ブラジル代表は「相性が一番いい」。日本代表の武器が刺さる!? 現役Jリーグ監督がそう分析する理由

シリーズ:コラム text by 高橋大地 photo by Getty Images,Shinya Tanaka

シュタルフさんコラムアイキャッチ
日本代表鎌田大地、田中碧、佐野海舟、伊東純也【写真:Getty Images,Shinya Tanaka】



 FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)で、日本代表はグループFを2位で突破し、決勝トーナメント初戦でブラジル代表と対戦することが決定した。シュタルフ悠紀監督(SC相模原)は「戦う可能性があった相手の中では、ブラジルが一番相性がいい」と語る。その理由はどこにあるのか。日本の武器はブラジルにどう“刺さる”のか。現役監督の視点から、スウェーデン戦の評価とブラジル戦のポイントを聞いた。(取材・文:高橋大地)

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受け身の守備では勝ち切れない

日本代表の堂安律対アンソニー・エランガ
日本代表の堂安律対アンソニー・エランガ【写真:Getty Images】


ーーまずはスウェーデン戦を振り返って、率直にいかがでしたか。

シュタルフ:試合前のポイントとして、スウェーデンの左サイド、つまり日本の右サイドの守備が甘くなる傾向があると思っていました。

 アレクサンデル・イサクが立ち上がりは左で入ってきたので、その背後、堂安律を右シャドーの位置に入れたのは良かったんじゃないかと思いました。日本の先制点も、そこをうまく使う形で生まれました。右サイドはもっと活用したかったところです。

 全体的には、ほぼグループリーグ突破が決まっている状況だったので、もっとローテーションするのかなと思っていました。2位通過の場合は、中3日しかないので。蓋を開けてみれば、意外といつものメンバーでしたね。

 ただ、スウェーデンは勝てば自力で2位に進出してグループ突破できる状況だったので、最初は圧力をかけてきました。シンプルなロングボールでも、チャンスとまではいかないですけど、試合開始直後からコーナーキックが続いたりして、簡単な入りにはならなかった。

 どちらもやられたくない気持ちがあったので、膠着した時間帯が長いゲームだったと思います。

 個人的な見解としては、日本は「受け身の守備」になってしまうとワールドクラスではないと思っています。スウェーデン戦も受け身の守備になってからは、相手のペースにしてしまいましたし、カットインシュートも決められてしまった。あの場面はディフェンスの距離も少し遠かったですよね。

 それ以外にも危ないシーンはありましたし、最後の方は鈴木彩艶のビッグセーブもあったと思います。負けなくてよかったという試合でした。

 プロである以上、全員が全部の試合に勝ちたい気持ちを持っているはずです。その中で、負けなしで2位通過できたのは一つの成果だと思います。

ーーグループリーグ全体としては、もう少し主体的に戦いたかったという印象ですか?

シュタルフ:結局、オランダ戦もスウェーデン戦も、受ける時間帯が長かった。

 たくさんのゲームを見ないと統計的な意味はないと思いますけど、それでも主体的な守備をしていたチュニジア戦は4-0の完勝でした。一方で、受け身の守備を選択したオランダ戦とスウェーデン戦は、負けてはいないんですけど、勝ち切れていない。

 3位でも決勝トーナメントに進出できる可能性があるというレギュレーションの中で、予選リーグでは、負けない戦い方も大事だったかもしれません。

 ただ、これからは決勝トーナメントで勝っていかないといけない。負けない戦い方でPK戦まで持ち込んでも、日本は何度もベスト16の壁を破れていない歴史があります。

 だから、その前に自分たちが主体的にゲームを進めて、しっかり勝ち切ることが必要になる。3位でも通過できるレギュレーションだったからこそ、オランダやスウェーデンを相手に、もう少し「主体性を持った戦い方」をするための“慣らし運転”ができるとよかったんじゃないかなと思います。

日本がブラジルと相性がいい理由は?

ブラジル代表に勝利したサッカー日本代表
ブラジル代表に勝利したサッカー日本代表【写真:田中伸弥】


ーー次の対戦相手はブラジルに決まりました。以前、戦う可能性のある相手の中ではブラジルが一番勝てる可能性が高いのではないかとおっしゃっていましたが、実際どう見ていますか。

シュタルフ:モロッコ、ブラジル、フランス、対戦相手の候補だった中では、やはりブラジルが一番相性がいいんじゃないかなと思います。

 理由としては、まずブラジルは基本的にボールを持つチームだからです。そこに対して、親善試合の後半で見せたような主体的な守備をぶつけると、高い位置でボールを奪える確率が上がる。

 そのきっかけからのカウンターに対する守備意識や、組織としての献身性は、ブラジルはそこまで高くないと思います。そういう意味で、日本の武器が刺さりやすい。

 逆にフランスやモロッコは組織力も高く、どちらかというと「いい守備からいい攻撃」というチームです。組織的な守備に、日本が引っ掛けられて失点してしまう展開も考えられますし、押し込まれた時には、個の技術や身体能力も含めて高いものを持っている。ノルウェーもそうですけど、条件だけで見れば、「組織+個性」のフランスやモロッコよりも、
「個性のみ」のブラジルが一番相性がいいんじゃないかなと思います。

 ただ、とはいえブラジルですからね。他のグループと比べれば、くじ運が悪いとしか言いようがないですね。

ーーブラジルに勝つためには、どういう戦い方が重要になると思いますか。

シュタルフ:今大会のブラジルは、3試合とも立ち位置に多少の違いはありましたが、あまり前線から守備をするイメージではないんです。ミドルゾーンに構えて、引っ掛けて、前線の個の力やクリエイティビティでゴールを奪う。この前の記事では「魔法」と言いましたけど、ブラジルはその魔法に期待している。

 魔法を出させないためには、しっかり相手陣地に押し込み切ること。もしくは、主体的な守備をする時間帯を作ることが一つです。

 もう一つの考え方としては、低い位置でブロックを組んでスペースを消し、カウンターのスペースを開けないことだと思います。これは、結局どちらを選ぶかという話で、日本が得意なのはどちらかという話です。

 先ほども言った通り、僕は、今の日本の受け身の守備はワールドクラスだとは思っていません。ただ、前から行く守備はワールドクラスだと思っています。そのワールドクラスの守備をぶつけた方が、勝率は高いんじゃないかなと思います。守備にしても攻撃にしてもです。それがブラジルとの親善試合の前後半にも露骨にあらわれていたと思います。

 奪った後のトランジションも大事ですし、ブラジルのミドルブロックも緩いと感じます。

 4バックがベースのブラジルですが、直近のゲームは、トップの選手を少し下げて4-4-2のひし形に近いフォーメーションで守備をしていたように見えました。今のブラジルは、組織的に規律の取れたブロックではないんですよね。1アンカーでもダブルボランチでも、カゼミーロ以外の選手の守備意識はあまり高くありません。

 そうすると、カゼミーロがいないエリア、日本のシャドーのところが空きがちになる。ブラジルは、全員で連携してスペースを消す組織的な守備があまり得意ではないと思うんです。

 もちろん、個の力はありますけど、システム的なアンマッチも含め(3-4-3対4バック)、そういったところを突いていければ、ブラジルが守備に追われる状況を作れる。

 高い位置で奪って、どんどん攻撃して、ブラジルが焦るような状況にできれば、彼らのゲームではなく、日本の土俵に引きずり込めると思います。

ーーこれまでとはまた違う戦い方というか、日本が本来得意な形に持っていくことが必要になりそうですね。

シュタルフ:そうですね。僕はそう思います。

 ただ、今大会の日本の戦い方の傾向を見て予測しろと言われたら、きっとまたミドルからローのブロックを組むんじゃないかなとは思います。日本の選手やスタッフは、その戦い方に、ある程度の手応えもあると思うんです。まだ負けていないですし、実際に大きく失点しているわけでもないので。

 でも、中途半端な高さで守って、ヴィニシウスが生きるような形になってくると……やっぱり彼はスペシャルな選手です。何とか日本の形に引きずり込みたいですよね。

ブラジルの“弱点”に刺さるのは?

日本代表MF伊東純也
日本代表MF伊東純也【写真:Getty Images】


ーー日本のキーマンになりそうなポイントや選手はありますか。

シュタルフ:ヴィニシウス絡みで言うと、右のセンターバックと右ウイングバックで出る2人の対人能力、関係性、距離感はもちろん鍵を握ると思います。

 あとは、当然チャンスは絶対に作られるので、鈴木彩艶が最後の最後でどれだけシャットアウトできるかもめちゃくちゃ大事になります。

 もしアグレッシブな戦い方を選択するのであれば、前線の3トップと、ダブルボランチ、ウイングバックの守備能力が大事になると思います。しっかり押し出して、相手の自由を奪い、しっかり潰す。だからキーマンは、日本がどういう戦い方を選択するのかによって変わってくると思いますね。

ーー何にせよ、日本が積極的に、主体的に戦えるかどうかが大事になりそうですね。

シュタルフ:そうですね。ボランチのところは、刈り取り型の選手がいた方がいいと思います。今回休ませていた佐野海舟を戻すプランなのではないでしょうか。守備を考えると、鎌田大地と田中碧のコンビよりも、佐野を入れたいです。

ーースウェーデン戦の起用を見ると、冨安と佐野はフルで休ませましたね。

シュタルフ:そうですね。そこはブラジル戦を見据えているのかもしれないです。あとは板倉にアクシデントがあったかもしれないので、彼がどういう状態なのか。
久保建英と堂安のサイドは、親善試合の時にはかなり効いていた印象があります。ただ、当初の見立てだと、久保は決勝
トーナメント2回戦ぐらいまでは厳しいという話もあるので、どうなのかなという感じですね。

 隠し玉的に久保が戻ってこられたらおもしろいと思います。

ーー久保が間に合わないのが前提とすると、右シャドーには伊東純也が入りますかね。

シュタルフ:今日見ても、やっぱり伊東はいいですよね。個人的に好きというのもありますけど、相手からするとかなり嫌な選手だと思います。

 ブラジルは、日本のような組織的なチームに比べると、献身的にスライドしない。サイドバックとセンターバックの間のスペースへのランニングに対しては、かなりルーズだと思います。

 通常4バックのシステムだと、そこをボランチがカバーするんですけど、カゼミーロ以外の選手は、あまり守備意識が高くない。センターバックも一瞬引っ張られたりして、相手の2列目からのランニングに対しての対応が遅れている印象を受けました。

 そういうところに、シャドーやボランチがランニングを仕掛けられると効果的です。伊東純也の右は効くと思います。

 そのような状況を作り出せば、カゼミーロは最終ラインのカバーリングに追われることになり、中盤のスペースが空いてきます。なので、左シャドーはどちらかというと受けられる選手がいいと思います。僕だったら、左シャドーはボールを受けられる鎌田を1つ前に出して、最前線まで飛び出していける佐野と田中のダブルボランチにする。

 そのメンバーなら、あまり戦術的に細かいことを選手に伝えなくても、その選手たちの特徴だけで、ブラジルのウィークポイントに刺さるんじゃないかなというイメージはありますね。

 4バックの間を狙った2列目からのランニングと、それによって空いたレッドゾーンで受けられる選手を配置できれば、チャンスメイクは可能だと思います。

 重要なのは攻撃をやり切ることです。ブラジルの選手が献身的に守備へ戻らないということは、裏を返せば、攻撃的なポジションに選手が攻め残っているということでもあります。ボールの失い方が悪ければ、一気にカウンターを浴びる危険性がある。日本は攻撃をやり切る意識と、最終ラインのリスク管理が大切になると思います。

ーーありがとうございます! ブラジルに勝って、またお話をお伺いできることを祈ります!

(取材・文:高橋大地)

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