無敗でグループステージを突破した日本代表【写真:Getty Images】
サッカー日本代表は日本時間6月26日、FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)グループステージF組第3節でスウェーデン代表と1-1で引き分け、グループ2位で決勝トーナメント進出を決めた。3試合を終えて無敗でグループステージを突破した森保ジャパンをどう見るべきなのか。試合後、元日本代表で2010年の南アフリカW杯のメンバーだった岩政大樹氏に話を聞いた。(取材・文:竹中愛美)[1/2ページ]
【単独インタビュー/取材日:6月26日】
「森保さんらしいチーム」だった理由

サッカー日本代表の森保一監督【写真:Getty Images】
ーースウェーデン戦は1対1という結果でしたが、試合を振り返ってみていかがでしたか?
「まずグループリーグを2位でしっかりと突破できたということ。あと感じたのは、『森保(一)さんらしいチーム』って感じがしたなということですかね」
ーー岩政さんがおっしゃる「森保さんらしいチーム」というのは、具体的にどういうことでしょうか?
「堅い試合にしたいときには、思いっきり堅くできることですね。この4年のアジアカップ、アジアの大会では、比較的、圧勝圧勝で、少し攻撃的なマインドのチームでワールドカップ(W杯)に臨むのかなと、思ったりしていたと思うんですよ、皆さん。
でも、本大会ではしっかり良い守備から、それもブロックを組むような守備から入っている。プレッシングもチュニジア戦以外は見せていないと思うんです。つまり、W杯本大会に向けて、それをチームの中でシフトさせているということ。選手たちにそれを理解させて、納得させて、落とし込んでいるので、そういう面で森保さんのチームって感じですよね」
ーー確かに、その視点で見るとすごく腑に落ちます。
「アジアの戦いをあれだけ圧勝して、親善試合でもいろんなチームを圧勝したときに、監督としては両方を考えると思うんですよね。そのまま攻撃のマインドを保ったまま、今大会はぶつかっていこうというように考える監督さんもいらっしゃると思います。けど、森保さんは相手との力関係を見た上で勝つための戦略を組む、それはすごく冷静、どちらかというとリアリストなタイプ。もともとそうだと思うんですけど。
例えば、(サンフレッチェ)広島時代の(森保監督の)前任者のミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ監督)であれば、そのまま行かせたと思いますけど、それを森保さんは広島を現実路線にさせて、より勝てるチームにした。やっぱりそっち側の監督さんだよなっていうのを、まざまざと見せつけたような予選だった気がします(笑)」
ーー前日会見でも森保監督は勝利を目指す姿勢を強調していましたが、後半に長友佑都選手や渡辺剛選手を投入した交代策にも、そのリアリストとしての一面が表れていたように感じました。
「いや、リアリストですよね。良し悪しではなくて、そこが森保さんの中でぶれない。普通ちょっとぶれると思うんですよ。これだけのメンバーを抱えていたら。相手の力関係を正しく見ようとしても、選手たちに少しアグレッシブに攻撃を仕掛けていくような、きょうのゲームじゃないようなゲームを選手交代含め、するのは考え方としてあると思うんですよね。
きょうなんて、負けても通過はほぼ決まっていたわけなので。でも、それをさせないというか。選手たちを止めているというよりも、ちゃんとそれを理解させて、納得させた上でやらせている感じですよね。それを1つ1つ紐解いていくと、W杯前のメンバー選考みたいなものも、点と点が線でつながるというか。こういう戦い方をみんなでまとまってやれるメンバーを選んでいるのが、ここにつながってくるなと思います」
「負けなしって言葉は結構危険」岩政大樹がそう語る理由とは

”歴代最強”の呼び声が高い現在の日本代表【写真:田中伸弥】
ーーそのような戦い方で、日本は無敗でのグループステージ突破を決めました。無敗は2002年の日韓W杯(2勝1分)以来、24年ぶりのことですが、ここもプラスの材料になりそうでしょうか?
「もちろん、負けなしで予選を勝ち上がるのは、これまでの日本ではあまり考えられなかったですし、1つ次のステージに進んだのは、内容も含めて、選手たちの感触も含めて、あるなとは思いましたね。ただ、一方で、負けなしって言葉は結構危険」
ーー危険、ですか?
「僕もJリーグで監督をやっていたのでよくあるんですけど、負けなしが続いた後に負けると、それが勝ちばっかりの連勝だったらいいんですけど、負けなしと言ってると、大体引き分けが入ってるわけですよね。(今回は)1勝2分なわけですよね。次の1回戦にしっかり勝たないと、結局、これで負けで終わった場合に、大会直前に監督が変わって、試合前にも変わったチュニジアにしか勝ってないことになるんですよ」
ーー確かにその見方もできますね。
「その後の勝ち負けによって全然見え方が、その負けなしの時間の見え方も変わってくる。これだけ歴代最強だ、最強だって言われていたチームが、結局そういうチュニジアにしか勝てなかったという歴史になる可能性は十分にあって。森保さんがそんなの関係なく割り切れるのはすごいなと思うし、そういう監督さんなんだなと思う。リアリストですよね。
僕はやっぱりロマンチスト側に走っちゃうから、『行っちまえ!』って言ってしまうと思う。もっと行ける、最後の交代も、得点を取りに行くような交代、若手の後藤(啓介)とか、塩貝(健人)とか、あっち系を出して、3戦目を僕は戦うと思う」
ーー確かに、その選択肢もあったように感じました。
「本当に良し悪しじゃなくて、それがぶれないなっていうのを見せつけたような、森保さんが(笑)。逆に言うと、アジアの戦いのときとかは、森保さんが目指している戦いとかではなくて、選手たちの能力をまず高めて、競争させるというフェーズだった。チームとしての戦いはもっと先に、W杯で戦うことを睨みながら見ていたというところが、ものすごく冷静だなというふうに思います」
「ブラジルと戦うことを想定していたんだろうな」森保一監督のマネジメント

スウェーデン戦後翌日、トレーニングに励んだ森保一監督と冨安健洋【写真:元川悦子】
ーー次はいよいよ決勝トーナメントです。スウェーデン戦では板倉滉選手が前半39分に筋肉系の異常を訴えて途中交代となり、オランダ戦で負傷した久保建英選手の状態も気になります。ここからの決勝トーナメントは中3日というように試合間隔が短くなりますが、蓄積疲労など不安な点はありますか?
「試合の疲れはあると思うんですけど、全チーム(同じ条件)だと思いますから。今回これまで中5日とかで刻んできているので、1回疲労を取った後に少し負荷も上げた上で試合に臨むというサイクルで進んできているはず。
それはシーズン中とあんまり変わらないはずなんですよね。3試合終わったからといって、フルで出た選手は数人しかいない。当然、疲れているけど、異常なほど疲労が蓄積している状況ではないと、個人的には思っています」
ーーここまで3バックの組み合わせを変えたり、スウェーデン戦では主力の堂安律選手や上田綺世選手、中村敬斗選手をフル出場させなかったりと、選手起用にも工夫が見られました。
「それを睨んだ上でのマネジメントをして、今回の冨安(健洋)だったり、佐野(海舟)を使っていないのはあると思う。逆に言うと、森保さんって、ブラジルと戦うことをある程度想定していたんだろうなと思う」
ーー決勝トーナメントを見据えた戦いだった、と。
「もちろん!」