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元Jリーガーが分析。ブラジル代表目線の「日本代表戦のリアル」。名将が見抜いていた弱点とは?【田中裕介のMatch dive】

シリーズ:田中裕介のMatch dive text by 田中裕介 photo by Shinya Tanaka, Getty Images
日本代表
ブラジル戦後の日本代表【写真:田中伸弥】



 FIFA ワールドカップ 2026(北中米W杯)・決勝トーナメントの重要な一戦。欧州や南米のトップリーグで活躍するタレントを擁するブラジル代表にとって、組織力のある日本は警戒すべき相手だった。かつて横浜F・マリノスや川崎フロンターレで活躍し、現在は解説者としても活躍する元Jリーガー・田中裕介氏に、この一戦の戦術的攻防をMatch dive(深層分析)してもらう。(文:田中裕介)[1/2ページ]

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立ち上がりの攻防

サッカー日本代表 堂安律
日本代表対ブラジル代表の模様【写真:Getty Images】


 立ち上がり、日本は高い位置からのプレスとミドルブロックを使い分けて構える守備を敷いてきた。これに対し、ブラジルも前線からマークをハメに行く姿勢を見せ、中盤での激しいボールの奪い合いで試合は始まる。

 ブラジルの保持時、左SBのD・サントスがやや高めの位置を取ることで、日本の右WB堂安律を低い位置へ釘付ける。その連動によって空いたやや内側のスペースで左WGのヴィニシウスがフリーで動く形を作り、開始10分間はブラジルがボールを握る展開となった。

 12分、ブラジルが素早い切り替えから決定機を作る。日本のGK鈴木彩艶が前線の上田綺世に向けて放ったロングボールを、CBガブリエウ・マガリャンイスが確実に対応。そのセカンドボールを回収した右SBダニーロ、カゼミロと繋ぎ前線へ素早く配球する。

 最後はブルーノ・ギマランイスからマテウス・クーニャがシュートまで持ち込んだ。手数をかけずに中央を縦に切り裂いた、ブラジルらしさを感じるスピード感のある攻撃だった。

 日本はブラジルに対し、比較的前から捕まえに行く姿勢を見せてきた。

 18分、ブラジルが左サイドのヴィニシウスへボールを預けると、日本は伊東純也と堂安の2枚で対応し、自由を与えない。これに対しブラジルは、日本の上田の牽制をいなすように、ボランチのカゼミロとブルーノ・ギマランイスが低い位置でしっかりとサポートに入り、パスコースを確保する。

 前線では、下がってボールを受けようとするトップのクーニャに対し、日本のボランチ佐野海舟が厳しく監視。日本は全体の陣形をコンパクトに保ち、ブラジルに中央のスペースを与えない。

 ブラジル側は前線のタレントが自由にポジションを変えながら、このブロックの隙間を探る時間が続き、ハイドレーションブレイクを迎えた。

 給水明け、ブラジルは攻撃の糸口を探るが、28分に日本の見事なパスカットから先制点を許してしまう。

 ピッチ中央からブラジルがカウンターを図り、右SBのダニーロが前線へパスを出した瞬間だった。日本のボランチ佐野にこのパスをインターセプトされる。佐野はそのまま自身でバイタルエリアまでボールを持ち込み、地を這うミドルシュートをゴールへ決めた。

 このゴールのシーン、直前に受けていたイエローカードの影響から、MFカゼミロは佐野への対応において強く当たることができなかった。佐野はそこをうまく突いた豪快なドリブルを見せ、ブラジルにとっては警戒していたショートカウンターから0-1とされる格好となった。

 失点したブラジルはすぐさま反撃に移る。中央の狭いエリアを崩すべく、32 分には縦の楔の縦パスから3人目が連動する形で中央へ侵入。

 最後はヴィニシウスがシュートを放ち、中央からの突破を目指した。しかし、ブラジルは中央の崩しに固執する傾向があり、シュートまでは持っていくものの、決定的なシーンに至るには至らない。

 35分にはブラジルが左サイドから崩しにかかったが、ここも日本の右WB堂安が前線への進入を阻む的確な守備対応を見せる。さらに日本は前線からの守備意識が落ちず、43分には前田大然が激しいプレスバックを披露。ブラジルは中盤での自由な配球を制限されたまま、前半の45分を終えることとなった。

ブラジル代表が変えた意識

日本代表MF佐野海舟
先制点をあげた佐野海舟【写真:Getty Images】


 ハーフタイム、ブラジルはパケタに代えてエンドリッキを投入。さらに、前半は流動的に動いていたヴィニシウスを左WGの外側に固定する配置修正を行った。

 これに伴い、左SBのレアンドロ・ペレイラが内側をランニングする役割を担い、日本の右シャドーを押し下げる。ブラジルはピッチを広く使いながらボールを横に揺さぶり、日本守備陣のズレを伺うビルドアップへと移行した。

 47分、ブラジルは自陣での失点から日本にカウンターを許す。前田大然に長い距離を持ち込まれ、たまらず右SBダニーロがファウルで止めてイエローカードを受けた。

 危険なシーンを迎えたブラジルだったが、51分に修正した形からチャンスを作る。左サイドから右サイドへ展開し、右SBダニーロがクロスを供給。中央のブルーノ・ギマランイスが合わせるも、日本のGK鈴木彩艶のセーブに阻まれた。

 ブラジルはこの時間帯、左サイドのヴィニシウスに日本の守備を引き寄せ、空いた右サイドからクロスを入れる形を継続的に行う。前半は中央からの崩しに終始して活路を見出せなかったが、ピッチの幅を広く使う意識へとシフトした。

 直後の52分にも右サイドからのクロスで決定機を作る。ここは日本の守備陣が身体を張って対応し、ブラジルはあと一歩のところでゴールを奪いきれなかった。

 ブラジルのクロス数は前半の12本に対して後半は28本にまで増加。試合後、カルロ・アンチェロッティ監督はハーフタイムに明確にサイドからのクロスを増やすよう指示を与えたとコメントを残している。さらに、クロスを上げる位置や上げる選手までもが整理されていたように思う。

 この指示が実を結んだのが、55分の同点ゴールのシーンだった。

 日本の両ボランチが締める斜め外側と、シャドーが下がった間のスペース。その整理された位置でフリーとなった左CBのガブリエウが質の高いクロスを供給し、ブラジルに 1-1 となる同点ゴールをもたらした。

 百戦錬磨のアンチェロッティがハーフタイムに施し、日本の守備に混乱をもたらしたクロスの『矢』だった。

 同点ゴールの後、ブラジルは一気に畳み掛ける。57分、サイドチェンジでボールを受けたヴィニシウスが個人技から冨安健洋、佐野海舟を次々と抜き去ってフィニッシュまで持ち込む。勝ち越し決定機となるシーンだったが、ここは日本のGK鈴木彩艶の驚異的な反応に阻まれ、追加点を許さない。得点後に畳み掛けるブラジルの個の力の圧を感じたシーンだった。

 65分、日本は両WBを交代し、鈴木淳之介と菅原由勢を投入してサイドの守備強化を図る。対するブラジルもクーニャに代えてマルティネッリをピッチに送り込んだ。

 日本が守備ブロックの耐久力を高めるための交代を行ったのに対し、ブラジルは攻撃のカードを切り追加点を狙いボールを動かし続けた。

ブラジルは指示通りの…

ブラジル代表 ヴィニシウス
ブラジル代表FWヴィニシウス【写真:Getty Images】


 77分、日本は鎌田大地に代わり田中碧、伊東純也に代わり町野修斗を投入。同ポジションでの交代を行うことで、疲労が見え始めた時間帯でも全体の強度を保とうとする意図を見せる。

 日本は10人全員が自陣に引いて守るブロックを形成。ブラジルはボールを左右に動かしながら外側からのクロスを狙い続けるが、日本の守備組織も集中力を維持して耐え凌ぐ。

 88分には、左から中央へ侵入したヴィニシウスが決定的なシュートを放ったが、日本は2人がかりの魂のスライディングでシュートブロックを行い、ゴールを許さない。

 試合は1-1のままロスタイムへと突入。ブラジルが後半を通じてボールを握り続け、攻め立てた努力が結実したのは、まさに試合最終盤、ロスタイムが5分経過した時だった。

 ペナルティエリア内中央でエンドリッキからボールを奪った田中碧が、ペナルティエリア内で鈴木淳之介へと繋ごうとしたところをブラジルが奪い返し、中央のブルーノ・ギマランイスへ。この局面、日本の守備陣はゴール前に人数自体は揃っていたものの、ボールを持ったギマランイスへと意識が集中してしまう。

 その瞬間に生じたわずかな隙を逃さず、シュートではなくマルティネッリへ。ブルーノ・ギマランイスが最後の局面で冷静にスルーパスを通し、マルティネッリがこれを沈めて決勝点を奪った。

 後半、辛抱強くボールを握り続け、指示されたクロスを軸に攻め続けた結果として得た待望の勝ち越しゴールとなった。

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