日本代表のFIFAワールドカップ2026(北中米W杯)は、またしても決勝トーナメント1回戦で幕を閉じた。ブラジル代表を相手に先制し、世界最多5度の優勝を誇る王国を追い詰めながらも、後半に逆転を許して敗退。イタリアでは、日本の組織力や献身性を評価する声がある一方で、世界の頂点に届くために必要な「個」の不在も指摘された。元イタリア代表の解説者たちは、サムライブルーの現在地をどう見たのか。(文:佐藤徳和)[1/2ページ]
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“グッドルーザー”で終わった日本
6月30日、サムライブルーの戦いは、FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)決勝トーナメント1回戦、ブラジル戦をもって終焉した。
またしても、ノックアウトステージ1回戦の壁を越えることはできず、日本は帰国の途につくこととなった。
イタリアでもグループステージ(GS)を終えた時点では日本を取り上げるメディアが多かったが、ブラジル戦での敗退後は、多くが語られなくなった。
ノックアウトステージ1回戦で姿を消した日本は、“グッドルーザー(良き敗者)”というイメージを置き土産に、W杯を後にすることとなった。
GSでは日本代表の戦いぶりを取り上げたイタリア紙『ラ・ガゼッタ・デッロ・スポルト』も、逆転勝利したブラジルにスポットライトを当て、日本については「またしても1回戦を突破できず」と触れるにとどまった。
森保一監督には10点満点中「5.5」の低評価が与えられ、「奇跡を起こすことはできなかった。すなわち、W杯のノックアウトステージで日本を勝利に導くことだ。前半は素晴らしかったが、その後は何もできなかった」と評した。
一方で、日本の指揮官と対照的に評価されたのがイタリア人監督カルロ・アンチェロッティで、「7」が付けられた。
「ブラジル代表監督に就任して以来初めてスターティングメンバーを固定した(GS最終節のスコットランド戦と同じメンバー)。交代策も的中し、(GSで評価の低かった)カゼミーロをピッチに残し続けるという大胆さも見せた(後半アディショナルタイムに交代)」
その采配を高く評価している。
「最後まで守り抜く」誤り
イタリア公共放送『Rai』のワールドカップ特番『Notti Mondiali』では、日本対ブラジルの一戦をコメンテーターが振り返った。
元日本代表監督のロベルト・ファルカンは「この試合の違いを分けたのは、ハーフタイムでのロッカールームでの采配だ」と話し、スクデットを獲得したASローマ時代のチームメイトであるアンチェロッティ監督を称えた。
また、元イタリア代表で1982年スペイン大会優勝メンバーのマルコ・タルデッリは、こう語っている。
「日本は簡単に戦える相手ではないことを世界に証明した。彼らは、守ることができ、カウンターを放ち、ダニーロのミスもあったとはいえ、ブラジルから得点を奪った。この素晴らしい日本は、敗退に値するものではない。素晴らしい戦いを見せた。これからさらにチームは良くなり、新たなチームを見ることができるだろう」
タルデッリと共にアッズーリを世界の頂点に立ったフランチェスコ・“チッチョ”・グラツィアーニは、こう振り返る。
「1-0とした後、最後まで守り抜くという考えに誤りがあった。多少の恐れや懸念を抱いたのだろうが、もしかすると、その思いはあまりにも大きかったのかもしれない」
「ブラジルが別のチームになった一方で日本も別のチームとなってしまった。ある時から突然守備的に変わり、ボールを放り込まれ、自陣のペナルティエリア内に押し込まれる形となって、ブラジルを優位にさせただけだった。そして、カウンターもできなくなってしまった」
先制点を挙げ、W杯最多優勝を誇る“王国”を慌てさせることはできた。
しかし後半はサンドバッグ状態となり、アディショナルタイムの失点で夢は無情に潰えた。
日本にはフオリクラッセがいない
話題を4日前のGS最終節・スウェーデン戦に戻そう。
1-1の引き分けで1勝2分けとし、2位突破を決めた一戦だ。同様に『Notti Mondiali』でのコメンテーターの意見を振り返る。
“チッチョ”・グラツィアーニは、こう語っていた。
「私がカルロの立場であるなら、日本代表を本当に警戒するだろう。なぜなら、日本の選手たちは、チームとして戦うからだ。全員が犠牲心を持ち、助け合い、ファイトし、良く走る」
一方、タルデッリは、日本代表に足りないものを指摘している。
「不思議なことに日本にはフオリクラッセがいない。日本にフオリクラッセがいたということを聞いたことがない。ただ、日本にはフオリクラッセはいないが、非常にチームとしてまとまっている」
この意見に同調したのが、元インテルの指揮官で、日本代表DF長友佑都を指導した経験を持つアンドレア・ストラマッチョーニだ。
グループステージ初戦のオランダ戦では『Rai』で解説を務めた。
「会場で日本対オランダを観たが、日本のFWはDFのように守っていたのが印象的だった。良く走り、献身的なプレーをする。それから、あのソックスを下げてプレーする左サイドウィングの中村(敬斗)は、私を夢中にさせる」
そのうえで、こう続けた。
「日本には確かにフオリクラッセがいない。上田綺世がエールディヴィジで25得点を獲得して、得点王になっているが、また別のカテゴリーのリーグだ」
フオリクラッセとは、イタリア語で「一流外」を意味する。つまり「規格外」を指す言葉だ。



