
イングランド代表対ノルウェー代表の模様【写真:Getty Images】
FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)準々決勝、イングランド代表vsノルウェー代表が現地時間12日に行われ、2-1でイングランド代表が勝利を収めた。しかし、トーマス・トゥヘル監督は試合後、「パフォーマンスには満足していない」と厳しい評価を下している。イングランド代表は、なぜ苦しみながらも勝利を手にできたのか。その勝因を戦術面と選手層の両面から読み解く。(文:安洋一郎)[1/2ページ]
イングランド代表がノルウェー代表に2-1で勝利

指示を出すイングランド代表のトーマス・トゥヘル監督【写真:Getty Images】
「結果は素晴らしい。ベスト4に進出した。本当にすごいことだ。ただ、パフォーマンスには満足していない」
より高い完成度を求めるトーマス・トゥヘル監督にとって、ノルウェー代表との準々決勝で勝利を収めたものの、選手たちのパフォーマンスは満足できるものではなかったようだ。
続けて「献身的な姿勢を見ることができたが、その内容ややり方で自分たちを苦しめてしまった。雑なプレーや多くの技術的なミス、スピード不足、連続性やリズムの欠如とね。今日は運に恵まれたと思うよ」と語り、自分たちのミスが原因で厳しい試合になったことを指摘した。
ただ、前提としてこの試合のピッチコンディションはトップレベルの選手であっても難しいものだった。それは両チームの選手のパフォーマンスが、試合の経過とともに下がっていったことを物語っている。
試合会場のマイアミは33度という高い気温に加えて多湿であり、現地メディアによるとピッチ上での体感温度は40度を超えると報じられていた。
イングランド代表は5日前、標高2240メートルのアステカ・スタジアムで、後半途中から10人で守り切るという死闘を演じており、疲労度や不調を感じるのは当然のことだろう。
トゥヘルはピッチ上でのパフォーマンスを厳しく指摘したが、イングランドはこれまで環境面で不利に働いている逆境を跳ね返し、ジュード・ベリンガムの2ゴールで接戦をものにした。
実際に指揮官の発言通り、ピッチ上での細かいミスは多かったが、なぜそれでも準決勝へと駒を進めることができたのだろうか。
徹底したノルウェー代表対策

ノルウェー代表FWアーリング・ハーランド【写真:Getty Images】
対ノルウェー代表ということを考えると、最も重要なミッションになったのがアーリング・ハーランドへの対策だ。結論から述べると、彼に仕事をさせなかったのが、この試合の最大の勝因だろう。
ラウンド16までに出場した4試合で7ゴールを決めていた世界的なストライカーへの対策は難しい。ブラジルが誇るガブリエウ・マガリャンイスとマルキーニョスという世界的CBであっても止めることができなかった選手だ。
ただ、フィニッシャーである彼に対して、彼に決定機につながるボールをできるだけ供給させないことを徹底することで、ゴールを決められるリスクをなるべく下げることができる。
ハーランドは試合の中で決して多くボールに関わるわけではない。
各試合のタッチ数を振り返ると、グループリーグ初戦のイラク戦(フル出場)は20回、第2戦セネガル戦(フル出場)は22回、第3戦フランス戦での完全休養を挟み、ラウンド32のコートジボワール戦(フル出場)で27回、ラウンド16のブラジル戦(フル出場)で30回を記録していた。
この少ないタッチ数であっても確実にゴールを決めるのがハーランドの凄さだ。
ノルウェー代表FWは準々決勝前の時点で、18本のシュートのうち12本を枠内に飛ばし、そのうち7本をゴールに結びつけていた。
データサイト『Opta Analyst』によると、シュートを放った位置やゴールまでの距離、相手がブロックにいるか、シュートを放った足や頭などの箇所などから算出されたデータである「ゴール期待値(xG)」は4.32。PKを除いた期待値では大会トップの数値だった。
ブラジル戦の2点目のシーンを除く17本のシュートをボックス内で放っており、そのうちゴールエリアの幅の中が15本、ゴールエリアの中が5本と得点に結びやすい位置からゴールを狙っている。
しかし、ノルウェーは彼の存在が大きすぎるあまり、フィニッシャーの役割が彼に依存をし過ぎていたのが、一つの課題だった。
ハーランドを封じられた後の二の矢がなかったノルウェー代表

ハーランドに次ぐゴール期待値を記録したマルティン・ウーデゴール【写真:Getty Images】
準々決勝以前の5試合でのハーランドを除くゴールスコアラーは、DFレオ・エスティゴーア(イラク戦)、SBマルクス・ペデルセン(セネガル戦)、MFセロ・アースゴール(フランス戦)、WGアントニオ・ヌサ(コートジボワール戦)の4名のみ。
この5試合でハーランドに次ぐxGを記録していたのが、MFマルティン・ウーデゴールの1.29であり、3位がWGオスカー・ボブの0.5、4位がアレクサンダー・セルロートの0.42と続く。
すなわち、ハーランドが封じられた時の二の矢がなかったのがノルウェー代表であり、イングランドは彼に対するチャンスクリエイトを徹底的に封じることで失点を最小限に防いだ。
トゥヘルのチームは最終ラインを揃えるハイラインで、簡単に中央を割らせないように工夫。クロスに対しては両CBがハーランドを挟み込む形で対応し、GKジョーダン・ピックフォードも積極的に飛び出してのパンチングで跳ね返してボールに触れさせない。最終ラインの選手たちは、試合を通して高いレベルでやり続けた。
これが結果として、彼が出場した105分間でボールタッチ数を21回に抑え、打たれたシュートは35分と53分の2本のみに繋がっている。