
フランス代表に勝利して決勝進出を果たしたスペイン代表【写真:Getty Images】
FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)準決勝で、スペイン代表はフランス代表を2-0で下し、決勝進出を決めた。大会屈指の攻撃力を誇るフランスを相手に、ラ・ロハは組織力と柔軟性で完全に上回り、盤石の勝利を手にした。疑問の声もあったルイス・デ・ラ・フエンテ監督の采配、そして個々の選手の成長が結実したスペインは、2010年以来となる世界一まであと一歩に迫っている。(文:佐藤彰太)[1/2ページ]
マン・オブ・ザ・マッチを挙げるなら…

スペイン代表DFマルク・ククレジャとペドロ・ポロ【写真:Getty Images】
今大会、圧倒的な力を見せつけながら勝ち進んできたフランス代表だったが、スペイン代表を相手に完敗を喫した。自慢の攻撃陣は完全に沈黙し、試合の主導権を握られ続けたまま、なすすべなく時間だけが過ぎていった印象だ。
“個”の力を前面に押し出すフランスと、組織力を武器とするスペイン。そんな構図で語られた一戦だったが、そもそもスペインも個々の選手のクオリティは非常に高い。そこに連動した守備、相手の特徴に合わせて柔軟に対応できる戦術的な幅が加わり、結果的に総合力ではフランスを大きく上回った。
この試合でマン・オブ・ザ・マッチを選出するのは難しい。ただ、明確に相手を上回ったポジションを挙げるのであれば、両サイドバック(SB)だろう。
左SBのマルク・ククレジャは、90分を通して圧巻のパフォーマンスを披露した。相手のキーマンであるキリアン・エンバペやウスマン・デンベレに自由を与えず、高い対人守備力を発揮。さらに、ボール回収の面でも存在感を示してチームに貢献している。
同ポジションには、アレックス・グリマルドという強力なライバルが存在する。それでも今大会で全試合フル出場を続けている理由を証明するような、安定感抜群のプレーだった。
そして、右SBのペドロ・ポロの存在も見逃せない。デジレ・ドゥエを投入し、反撃の流れを掴もうとしていたフランスに対し、勢いを完全に削ぐような試合を決定づける貴重な追加点を奪った。
ラミン・ヤマルとの連係も試合を重ねるごとに成熟しており、右サイドから生まれる攻撃はスペインの大きな武器となっている。神出鬼没な動きは相手DFにとって厄介極まりなく、常に視界に捉え続けることが難しい存在だ。
評価すべきルイス・デ・ラ・フエンテの采配

スペイン代表 ルイス・デ・ラ・フエンテ監督【写真:Getty Images】
さらに、ここまで采配面で疑問の声が上がっていたルイス・デ・ラ・フエンテ監督も、この結果によって周囲を納得させたと言っていいだろう。
初戦ではカーボベルデ代表を相手にまさかのスコアレスドローに終わったが、その後の思い切った決断力と選手起用は、大きな成果へとつながっている。
EURO2024(欧州選手権)でヤマルとともに猛威を振るったニコ・ウィリアムズ、ウルグアイ代表戦で怪我を負ったジェレミ・ピノ、そして今季オサスナで台頭しメンバー入りを果たしたビクトル・ムニョスは、ともにコンディション面で万全とは言えず、十分な戦力として機能しているとは言い難い。
しかし、その穴を埋めて余りある働きを見せているのがアレックス・バエナだ。この試合では、所属するアトレティコ・マドリードでディエゴ・シメオネ監督の下で磨かれたハードワークを発揮。守備面での貢献に加え、ビルドアップ時には出口となるポジションを取り続け、周囲を活かす持ち前のインテリジェンスを披露した。
今大会最長となる83分間のプレータイムを与え、ギリギリまでピッチに残し続けたデ・ラ・フエンテ監督の判断は、大いに評価されるべきだろう。
ペドリが不調でも…

スペイン代表MFファビアン・ルイス【写真:Getty Images】
それだけではない。チームの心臓とも言える存在でありながら、不調が続いていたペドリを先発から外し、準々決勝のベルギー代表戦に続いてファビアン・ルイスを起用。ペドリとは異なる特徴を持つ同選手だが、卓越したプレス回避能力で与えられた役割を完遂し、中盤に安定感をもたらしている。
仮に優勝を果たせば、デ・ラ・フエンテ監督は、ビセンテ・デル・ボスケ氏に続き、スペイン人史上2人目となるW杯とEUROの2冠を達成した監督となる。
試合中には、意図を読み取りづらい采配に疑問を抱く場面もあり、思わず口を挟みたくなることもある。
しかし、そうした疑問の声をよそに、最終的には「37戦無敗」という揺るぎない結果へとチームを導いている。その手腕こそ、名将たる所以なのかもしれない。