【写真:Getty Images】
FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)準決勝、イングランド代表vsアルゼンチン代表が現地時間16日に行われ、2-1でアルゼンチン代表が勝利を収めた。しかし、84分までリードしていたのはイングランドだった。なぜ、トーマス・トゥヘル監督のチームは、試合終盤に2点を決められて逆転負けを喫したのだろうか。(文:安洋一郎)[1/2ページ]
イングランド代表がアルゼンチン代表に逆転負け

イングランド代表FWハリー・ケイン【写真:Getty Images】
「今の時点では、後悔はありません。チームはすべてを出し切り、勝利に非常に近いところまで行きました」
イングランド代表のトーマス・トゥヘル監督は、85分から2ゴールを決められて逆転負けを喫したアルゼンチン戦をこのように振り返った。
指揮官の言葉通り、一般的に84分まで1-0でリードしているチームが勝利に近いことは事実だろう。ただ、この試合に限れば、この時間帯までリードを保っていたこと自体が奇跡に近い展開だった。
先制点を奪うまでは完璧に近い展開で、55分に自陣からの長いボールを起点に、右WGモーガン・ロジャーズのクロスを左WGアンソニー・ゴードンがダイレクトで流し込む形でリードを奪った。
しかし、データサイト『Opta』によると、先制点を決めてから同点に追いつかれる85分までのイングランドのポゼッション率は12%に留まったそうだ。
終始攻められ続けるという展開となり、アルゼンチンの攻撃をジャブのように受け続けた末の失点だった。
なぜ、イングランド代表は先制点を決めてから相手に攻められ続けたのだろうか。
なぜイングランドは守り切ることを選択したのか

10人でメキシコ相手に勝ち切ったイングランド代表【写真:Getty Images】
その理由の1つとして、準決勝までの勝ち上がり方が影響を与えていると考えられる。
今大会初戦のクロアチア代表戦では積極的な戦いを見せていた。
3-2で迎えた72分にFWマーカス・ラッシュフォード、FWブカヨ・サカ、MFモーガン・ロジャーズの3人を投入し、85分にサカのアシストからラッシュフォードに得点が生まれて4-2の打ち合いを制した。
大会当初はリード時も攻撃的選手を積極的に投入することで2点目を奪いに行っていたが、ラウンド16のメキシコ戦から試合をクローズさせる方法を変える。
この試合では54分にレッドカードが出て数的不利になると、74分にMFエリオット・アンダーソンに代えてDFダン・バーンを投入。中盤の枚数を削り、5バックにする[5-4-0]のブロックで相手のクロスを跳ね返し続けて勝利した。
準々決勝のノルウェー戦では、延長前半の93分に勝ち越しに成功すると、勝ち越した後は自陣でブロックを構えてからカウンターを狙う形にシフト。111分には2試合連続でバーンを投入し、再び[5-4-1]のブロックで無失点に抑えて準決勝へと勝ち上がった。
大会序盤と決勝ラウンドでは状況が異なるとはいえ、イングランドは直近の試合で1点のリードを守り切るフットボールを展開していた。
こうした成功体験を踏まえて、トゥヘルは1点リードのアルゼンチン戦でも5バックにして勝ち切ろうという姿勢をみせたと考えられる。
ただ、アルゼンチン相手に試合終盤から1点を守り切ろうとする采配は相性が悪かった。
75分以降に10ゴール。試合終盤に強かったアルゼンチン代表

劇的な勝ち越しゴールで勝ち上がってきたアルゼンチン代表【写真:Getty Images】
一方のアルゼンチン代表は、準決勝までの過程で試合終盤に多くのゴールを決めていた。
グループリーグ初戦から準々決勝までの6試合で17ゴールを決めており、そのうち10ゴールが75分以降に決まっている。
FWフリアン・アルバレス、もしくはFWラウタロ・マルティネスを途中起用できるストライカーの選手層や成熟したチームならではの粘り強さで、今大会の激闘に勝利してきた。
そういった成功体験のあるチームは試合終盤のビハインドでも焦らない。すでに今大会でもラウンド16と準々決勝でビハインド、もしくは同点時から勝ち越しに成功しており、イングランド相手に先制点を決められた時点でも選手たちの焦りは感じられなかった。