約1ヵ月にわたり開催されたFIFAワールドカップ2026(北中米W杯)がスペイン代表の優勝で幕を下ろした。出場国枠が「48」に増え行われた最初の大会。結果として成功だったのか。大会を振り返る中で見えてきた収穫や課題、今後への懸念点をまとめる。(文:小澤祐作)[1/2ページ]
史上初の48ヵ国開催が終了
出場枠が従来の32ヵ国から、48ヵ国に増加して行われたFIFAワールドカップ2026(北中米W杯)。サッカーの歴史を変える新たな試みという中で、良くも悪くも、様々な発見があった。
これまでの大会から参加国枠が「16」も増えたことで、今大会にはニューフェイスが多く揃った。その中でも人々の関心を引いたのがカーボベルデ代表。グループリーグを2位で通過すると、ラウンド32ではアルゼンチン代表と激闘を繰り広げ、最終的には2-3で敗れたものの、世界から称賛を浴びることになった。
こうした国にスポットライトが当たったことは、参加国枠増加によるメリットだろう。カーボベルデの躍進により、これまでW杯と無縁だった国にも今後大きなチャンスがある可能性を示した。これは、FIFA(国際サッカー連盟)が掲げる「サッカーの発展」や「競技力向上」という目的を果たすうえで重要なことだ。
一方で、出場国が増えたことにより、グループリーグにおけるゲームレベルはやや落ちた印象が否めない。結局、初出場国でグループ2位以内に入ったのはカーボベルデだけ。ウズベキスタン代表やヨルダン代表、キュラソー代表などが、W杯にふさわしい実力に達していたかは疑問符が付く。強豪国はほぼ順当にトーナメントへと進んでおり、緊張感はまるでなかった。
とくにアジア勢は、ほとんどの国がW杯で上位に食い込むだけの力を持っていなかった。ラウンド32に進んだのは日本代表とオーストラリア代表だけで、その2チームもベスト16には手が届いていない。「W杯という世界最高の大会の価値を下げた」と評価されても仕方がないだろう。
3位チームの突破も微妙だった
グループリーグにおける緊張感の欠如、という意味では、3位チームの上位8ヵ国もトーナメントに進出できるというレギュレーションも見逃せない。日本代表のように、2試合でほぼ突破を決めてしまう国が今大会は多かった。
また、セネガル代表のようにわずか1勝でも突破できる可能性があるという条件が、W杯という世界最高の舞台にふさわしいかも疑問。そもそも、対戦相手の強さや試合の実施順、最終節を迎える時点で得られる情報がグループごとに異なる中、勝ち点や得失点差で3位チームを横断的に比較する方式は、公平性を巡る課題が残った。
トーナメントにおいても、従来の形であれば1位対2位で固定できたものを、1位通過で2位チームと当たる国もあれば、同通過で3位チームと当たる国もあり、かなり不公平な組み合わせになっていた印象は否めない。
実力の劣る国からすると、仮に2敗しても、3位通過があることで最後まで希望を抱きながら試合ができるというのは大きなメリットだ。また、韓国代表のように、自分たちの試合が終わっても生き残る可能性が残されるため、話題性もあった。
しかし、32ヵ国開催でグループ上位2チームが決勝トーナメントに進出というレギュレーションの方が圧倒的にわかりやすく、しっかりと実力を反映したトーナメント表になることは間違いないだろう。今大会はかなり複雑だった。
最大のデメリットはやはり…
そして、48ヵ国開催による最大のデメリットは、やはり選手への負担だ。
今大会は期間中にコンディションを崩す選手が多かった。アルゼンチン代表は決勝戦で3人が負傷交代。イングランド代表やポルトガル代表なども、トーナメント中に主力選手を欠くことがあった。また、日本代表も鎌田大地がブラジル代表戦で負傷。仮にラウンド16に進んでいた場合、欠場することが濃厚だった。
大会全体の試合数は従来の64試合から104試合へ増加し、ラウンド32が新設されたことで、決勝進出国が戦う試合数も7試合から8試合へ増えた。クラブでの過密日程に加え、長距離移動や暑さも重なり、上位進出国の選手にかかる負担は一段と大きくなっている。
新ルールでスローインやゴールキックの再開時間が決められ、ゲームのテンポが速まったことも、プレーヤーの肉体に多少の影響は与えているはずだ。
試合間隔はある程度確保され、全試合でハイドレーションブレイクも導入された。それでも、暑さの中での試合と広大な北中米を横断する長距離移動が重なり、選手の負担を十分に軽減できたとは言い難い。
今回は、アメリカだけでもかなりの広さがある北中米での開催であり、移動距離は過去最大級。今後もこの規模の大会があるかどうかはわからない。しかし、48ヵ国でのW杯を継続するならば、スタジアムの数などを考えても複数の国による共催は欠かせないはずで、移動の問題は必ずつきまとうだろう。
近年は、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)などのフォーマットも大幅に変わり、試合数が増加。とくにビッグクラブでプレーする選手は過密日程を強いられ、大怪我を負うケースも増えている。かつてリヴァプールのGKアリソンは「みんな、うんざりしている」とハードスケジュールについて公に不満を漏らすことがあった(2024年英紙『デイリー・メール』より)。
W杯はすべての選手が万全なコンディションで挑んでこそ、最高の試合が繰り広げられる。しかし、クラブに加えナショナルチームの大会まで試合数が増えては、もはや選手の体力はもたない。今回のW杯で改めて証明されたのではないか。



