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コラム 7時間前

「スペインなら、とっくにトップチーム」イタリア最高の逸材は、なぜ名門ミランではなくコモ1907を選んだのか【コラム】

マッティーア・リベラーリ
イタリアの逸材マッティーア・リベラーリ【写真:Getty Images】



 スペインでは、10代の才能が世界最高峰の舞台で中心を担う。一方、若手不足が叫ばれるイタリアでは、将来を嘱望された逸材でさえ、名門クラブで十分な機会を得られない。ミランの下部組織で「魔法使い」と呼ばれたマッティーア・リベラーリも、その一人だった。「スペインなら、とっくにトップチームで起用されている」と評された19歳は、なぜ古巣ミランではなくコモ1907を選んだのか。その決断からは、イタリアサッカーが抱える育成の問題と、若者が未来を託すクラブの条件が見えてくる。(文:佐藤徳和)[1/2ページ]

スペインとは対照的。イタリアの育成事情

スペイン代表
FIFAワールドカップを制したスペイン代表【写真:Getty Images】



 FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)を制したスペイン代表の力は圧倒的だった。決勝のアルゼンチン戦は、90分で試合を決着することはできなかったものの、ファイナルとは思えないほど両者の間には大きな開きがあった。

 とりわけ目立ったのは、その若さだ。大会期間中に19歳の誕生日を迎えたラミン・ヤマルに加え、センターバックのパウ・クバルシもまた19歳。今大会8試合すべてにフル出場し、わずか1失点に抑えた。10代で、もはやベテランのような風格が漂う。末恐ろしい存在だ。

 攻守の要には、これからの時代を担う2人がいる。さらに、ペドリは23歳、ガビも21歳とまだ若い。次回大会でも中心を担うはずだ。ラ・ロハの“心臓”であるロドリでさえ30歳。次回大会も十分に狙える年齢であり、しばらくはスペインの時代が続くはずだ。

 その一方、3大会連続でW杯本大会出場を逃したイタリアは、若手の育成に苦労を強いられている。いや、優秀な人材が不足しているわけではない。むしろ、トップチームで積極的に起用されていないと言うべきだろう。

 イタリアのアンダー世代は決して劣ってはいない。現に、今年5月から6月にかけて開催されたU-17ヨーロッパ選手権では、2年ぶり2度目の優勝を果たしている。

 イタリアで最も将来を嘱望されている一人が、マッティーア・リベラーリだ。2007年4月6日生まれの19歳である。

 リベラーリに関しては、その起用法を巡って数多くの議論が交わされてきた。「スペインであれば、とっくにトップチームで起用されている」。そんな声が多く聞かれた。

 リベラーリを巡る評価こそ、現在のイタリアの育成の現状を如実に物語っているといっても過言ではない。

幼少期から突出していたリベラーリの才能

マッティーア・リベラーリ
ミラン時代のマッティーア・リベラーリ【写真:Getty Images】



 マッティーアは、イタリア北部ロンバルディーア州、カラーテ・ブリアンツァの生まれだ。州都ミラノからは北に約34キロの距離にある。その才能は幼少期から突出していた。

 ミラノ郊外のクラブ、ロデンゼの育成部門責任者を務めていたアルベルト・ビアンキは、6歳だった頃のマッティーアを回想する。

「幸運にも、私が最初にマッティーアを見ることができた。ムッジョで彼を指導していた時のこと、“ピッコリ・アミーチ(最年少カテゴリー)”に所属していたが、同年代の選手たちとは明らかにレベルが違うことがすぐにわかった。

 シーズン終了後、ロデンゼの一員として、アマチュアチームが参加する夏の大会に連れて行ったのだが、そこで彼は、少なくとも3つ上のカテゴリーの選手たちを相手に、誰よりも優れたプレーを見せていた」

 さらに続ける。

「彼はすでに2歳年上の選手たちと一緒にプレーしていた。ボールを受けると、ドリブルで相手を抜き、右へ左へ進んでいった。そして何より、最後はしっかりとシュートを決めていた。彼はテクニックを見せること自体に酔いしれるタイプではなかった。それが彼の強みだった」

 テクニックに奢れることなく、しっかりとシュートで完結できる選手であった。小さい頃から実戦向きのプレーヤーだったのだ。マッティーアを止められる子どもはいなかった。まさに無双していた。

 ミランのスカウトの目に留まったのは2013年。ミラノのもう一つのビッグクラブ、インテルもリベラーリの獲得に動いていたが、マッティーアは最終的にロッソネーロを選択し、トライアルテストを受けた末に入団した。ミランの下部組織では、異名も生まれた。「リッソーネの魔法使い」。

 なぜなら、マッティーアがボールを持った瞬間、まるで本当にボールが消えてしまうかのようだと信じるチームメイトが何人もいたからだ。イタリア全土から才能あふれる若者が集まるミランでも、それほど突出した存在だった。

 ファンタジスタは、もはや死語のような言葉だ。

「体が小さい」。ミランに居場所はなく…

ロベルト・バッジョ
かつてのイタリアはロベルト・バッジョを筆頭にファンタジスタの宝庫だったが…【写真:Getty Images】



 かつてのイタリアには、ファンタジスタが溢れていた。ロベルト・バッジョ、フランチェスコ・トッティ、アレッサンドロ・デル・ピエーロ、アンドレア・ピルロといった選手たちが、その代表格だった。

 今のイタリアで、ファンタジスタと呼ぶにふさわしい選手がいるだろうか。しかし、リベラーリは、その評価に値する可能性を秘めている。

 実は、彼には特別な趣味がある。母親から受け継いだ絵を描くことだ。リベラーリが今年5月に行われた『ラ・ガッゼッタ・デッロ・スポルト』のインタビューで明かしている。

「時間があるときには、絵を描いているんだ。リラックスできるから好きなんだ。キャンバスに絵を描いている。その瞬間は、サッカーも含めてすべてのことから完全に離れて、頭を切り替えることができるんだ」

「ストリートアートが好きだから、バンクシーが好きだ。普段はインターネットで絵を探して、それを真似して描いているんだ。でも、本格的なものじゃないよ(笑)」と謙遜するが、彼が実際に描いた作品を見る限り、素晴らしい腕前だ。

 こうした特別な趣味が、彼の創造性を育んでいるのかもしれない。

 非凡なテクニックや類まれな創造性を持つ一方で、リベラーリに欠けているものがある。それは、現代サッカーに不可欠な要素の一つとなったフィジカルの強さだ。

 169cmの小さな身体は、徐々にレベルが上がるにつれて、“障害”となった。実際、ミランでもトップレベルでプレーするには「小さい」と言われてきたことを、本人が明かしている。

 ミランに居場所がないと悟ったリベラーリは、10年間にわたり所属したミランに別れを告げ、2025年8月8日、新天地にセリエBのUSカタンザーロを選んだ。この年代で最も将来を嘱望された選手の一人でありながら、驚くことに移籍金は発生しなかった。

 しかし、2024年U-17欧州選手権準々決勝のU-17イングランド代表戦で見せたリベラーリの一撃を見れば、フィジカルの弱さが足かせにはならないと理解できる。このゴールは、大会屈指のベストゴールの一つとして、今でも語り継がれている。

 右サイドでボールを受けると、ペナルティエリアにドリブルで仕掛け、3人、4人の相手選手に囲まれながらもバランスを崩すことなくボールをキープし、最後は左足の強烈なシュートをゴールに突き刺した。リベラーリのキャリアを語る上で、絶対に欠かすことのできないゴールである。

 リベラーリは語る。

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