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日本代表が求める「個」はスペインと何が違う? 岩政大樹が「2050年に優勝と言うなら今こそ議論を」と話す理由【コラム】

シリーズ:コラム text by 竹中愛美 photo by Getty Images

北中米W杯 決勝トーナメント1回戦 日本代表×ブラジル 試合後

日本代表は北中米W杯決勝トーナメント1回戦でブラジル代表に敗れ、ベスト32で敗退した【写真:Getty Images】



 スペイン代表の優勝で幕を閉じたFIFAワールドカップ2026(北中米W杯)。日本代表の森保一監督は「スペインのようにボールも握りながら局面でも勝っていけるチームを目指すべき」と語った。その言葉を受け、本サイトで大会期間中に特別解説を務めた岩政大樹氏は、「日本が考える『個』とスペインが育てる『個』は違う」と感じたという。日本サッカーが次の一歩を踏み出すために、本当に考えるべきこととは何か。(取材・文:竹中愛美)[1/2ページ] 

「スペインを目指す」と言う言葉に浮かんだ疑問

スペイン代表

2010年大会以来2度目のW杯優勝を果たしたスペイン代表【写真:Getty Images】


 北中米W杯決勝を前に、森保一監督はNHKの中継で「最終的にはスペインのように、ボールも握りながら局面でも勝っていけるチームを目指していくべきかなとは思っています」と口にした。

 日本代表は近年、組織力を武器に世界との差を縮めてきた。一方で、森保監督も「個」の重要性について言及している。

「普及育成から育成年代で連携・連動・組織で戦う力を、日本は自然と培っていける文化であり、教育を受けていますけど、1対1で攻撃も守備も自分が勝っていくんだという責任を持っていくところを選手たちに培ってもらえれば、自然と組織力もまたプラスアルファの力になるかなと思います」

 しかし、この言葉を聞いた岩政大樹氏は、「方向性そのもの」ではなく、「そこへ至る過程」に違和感を覚えたという。

「派手さが必要なくて、的確さですよね。そこを常に選べる。その判断力と理解力が、スペインがスペインたらしめている要因だと思う」

 ロドリ、ファビアン・ルイス、ダニ・オルモ、ペドリ――。

 誰もが高い技術を持ちながら、必要以上に目立とうとはしない。個人技で試合を決めるというより、最も正しいプレーを選び続ける。その積み重ねが、スペインの圧倒的な安定感を生み出していた。

「ペドリは若干、派手さもありますけど、より的確さが目立つ。森保さんも『スペインを目指そう』とおっしゃっていましたけど、僕は日本のフットボールとは結構文脈が違う気がしているんです」

 岩政氏が語りたかったのは、スペインの完成されたスタイルではない。

 そのスタイルが、どのように育まれたのか、ということだった。

 北中米W杯で日本代表はベスト32に終わった。ブラジル代表との決勝トーナメント1回戦敗退後、選手たちからは「もっと個を高めなければいけない」という言葉が相次いだ。

 岩政氏自身も当初は同じことを感じていたという。

「僕も当然そう思ったんですよ。やっぱりフランスのエムバペとか、ハーランドとか、メッシとか、ヴィニシウス・ジュニオールとか、ああいう領域の選手を輩出しないと優勝なんて無理だよなって」

 だが、時間が経つにつれ、ひとつの疑問が頭から離れなくなったという。

スペインは「2人組、3人組」の中で個を育てる

北中米W杯決勝 アルゼンチン×スペインより スペイン代表のダニ・オルモとファビアン・ルイス

岩政氏はダニ・オルモやファビアン・ルイスらの的確なプレーがスペインをスペインたらしめているという【写真:Getty Images】


「じゃあ、その『個』って何なんだろうかって考えていて。その個というものの捉え方が、やっぱり僕もそうなんですけど、日本が思い浮かべる個って、フランス系の個なんですよ」

 日本で「個」と聞くと、多くの人がイメージするのは、1対1を制し、自ら局面を打開する圧倒的な能力だ。

「そういう派手さのある個ですよね。でも、スペインの個って、ちょっと違くないですかって話なんです」

 そして、岩政氏は問いを投げかける。

「じゃあ、これってどうやって生み出されますかってことです」

 岩政氏は「日本が言う個」と「スペインが育ててきた個」は、そもそも別物ではないかと考えている。

 では、その違いはどこから生まれるのか。岩政氏が着目したのは、育成年代のトレーニングだった。

「スペインの個って、そもそも子どもの頃から2人組、3人組の中の個なんですよ。小学生ぐらいから2対2で始まるんです」

 2対2では、ドリブルでどこへ運べば味方が空くのかを考える。3人になれば、ポジションチェンジや追い越し方、パスの仕方を繰り返し学ぶ。その積み重ねが11人制へと広がり、スペインの組織的なサッカーにつながっていくという。

 一方、日本は違うという。

「日本の育成って、個じゃないですか。ボール扱いだったり、コーンドリブルだったり、1対1だったり」

 さらに、日本人が持つスポーツ観も影響しているのではないかと岩政氏は考える。

「相撲や柔道みたいな日本の伝統競技って個人競技なんですよ。だから『個』というと、1対1の考え方になる。『キャプテン翼』などの影響もあると思っていて、翼くん対日向くんみたいな感じになる。その個の集合体がフットボールみたいな、そういう感じがするんです」

 もちろん、どちらが正しいという話ではない。

「日本のサッカーとスペインのサッカーって、体型が似ているから大きくもないし、テクニックもあるから、似てるじゃんって言うんですけど、その文脈で言えば似てるかもしれないけど、選手の育成の仕方が違うんですよ」

 今大会のスペインを見ても、それは表れていた。

「ファビアン・ルイスがポジションを変えたら、それに合わせてダニ・オルモが横断して、その空いたところへペドロ・ポロが入る。2人組、3人組が刷り込まれている感じがするんです」

 ひとりひとりが勝手に動いているように見えて、全員が同じ絵を共有している。

 だから、プレーが「的確」に映るのだ。

 目指すべきなのは、プレースタイルだけなのか。それとも育成そのものなのか。岩政氏は、その問いを日本サッカー全体で考える必要があると感じている。

「日本のフットボールをちゃんと書き換えないと、僕は間に合わないと思っている」

北中米W杯 ブラジル×日本 試合に敗れた日本は肩を落とす

日本代表が目指すべきサッカーとは何なのか【写真:Getty Images】


「スペインのフットボールって何なのか。それはどう育てているのか、みたいなところを今から始めて、2050年に優勝と言っているなら、それまでに日本のフットボールをちゃんと書き換えないと、今こそ議論をしないと、僕は間に合わないと思っているんですよ」

 現在のJリーグでも、高強度のプレスや対人能力が重視される傾向がある。

 その流れ自体を否定するつもりはない。それでも岩政氏は、日本が向かっている方向と、スペインが歩んできた道は、本当に同じなのかと問いかける。

「スペインの場合はそういう選手を輩出するだけでは、個ではブラジルとかに勝てないという発想からグループトレーニングが始まって、組織としてどう戦うのかを国をあげて作り始めてきた。

 どこまで国をあげたか僕はそこの場にいないから、言えないんだけど、そこの土壌がスペイン全体で行われてから、ようやく2010年(のW杯優勝)があって、今回の26年があるという形なので」

 その意味で、今の日本代表は岐路に立たされているのではないかとも感じているようだ。

「このまま突き進んで、当然、(ベスト)8ぐらいまではいく可能性は全然組み合わせ(次第)であると思うんですよ。その先に行くためにアルゼンチンはアルゼンチンのフットボールがあって、スペインにはスペインのフットボールがあったよねって、みんな言っているんだけど、『それってじゃあ、日本は何?』みたいなところまでは議論していない。

 ざっくりスペインを目指しましょうとか、最初の頃はブラジルを目指しましょうとか言って、学びましょうとやっていたものが、今はドイツとかフランスとか、あの辺が入ってきて。『で、日本は?』って、みたいなところをスペインを見ていて感じた」

 では、日本サッカーは何を目指すべきなのか。

 岩政氏は「個も組織も必要」という言葉だけでは足りないと話す。

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