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関連書籍 12年前

松本山雅劇場 松田直樹がいたシーズン

オレたちと この街と どこまでも
【著者】宇都宮徹壱

text by 宇都宮徹壱

典型的な地方都市で繰り広げられるサッカークラブをめぐる波乱に満ちた物語
永遠に記憶される「あのシーズン」が蘇る

元日本代表・松田直樹選手の突然の死を乗り越え、JFLから悲願のJ2昇格を果たした松本山雅FC。
国内屈指のサッカー専用スタジアムと驚くべき集客力を誇り、日本サッカーに新しい息吹を与えている山雅。
このクラブはなぜ、これほど多くの人々を魅了し、そして巻き込んでしまうのか?

この本は、松本山雅FCの激闘の2011年シーズンを追ったノンフィクションである。

<目次>
プロローグ 松田直樹、松本山雅と邂逅す
第1幕 映画『クラシコ』の後日談
第2幕 アルウィンを巡る物語
第3幕 それぞれが目指すもの
第4幕 あるフットボーラーの引退
第5幕 野津田で明らかになったこと
第6幕 オレたちと、この街と、どこまでも
第7幕 最南端からの生還
第8幕 ジャイアントキリング、再び
第9幕 北信越リーグの記憶
第10幕 クラブと共に生きる、ということ
第11幕 「遥かなる頂」を目指して
第12幕 新たな物語のはじまり
第13幕 松田直樹という生き方(『フットボールサミット第2回』掲載インタビュー)
エピローグ 「サッカー、楽しもうぜ!」
あとがき 「40番目のJクラブ」へのエール

<本書「プロローグ 松田直樹、松本山雅と邂逅す」冒頭部分より>
新しいシーズンが開幕した。
2012年3月4日。この日、Jリーグ・ディビジョン1(J1)に先立ち、Jリーグ・ディビジョン2(J2)第1節、全11試合が全国各地で行われることになっていた。
すでに2500円のチケットを購入していた私は、東京ヴェルディ対松本山雅FCのゲームが行われる、東京・味の素スタジアムに向かった。もちろん、取材者として入場することもできたのだが、今年はいち観客としてJリーグ開幕を迎えたいという気持ちのほうが強かった。
今年で20シーズン目を迎えるJリーグ。だが、そうした祝賀ムードとは別に、東日本大震災後に初めて迎える開幕であることは、非常に重要である。
昨年、J1・J2共に開幕戦を終えたところで、日本は3月11日の未曾有の大震災に見舞われた。以後、4月23日のリーグ再開まで6週間にわたりリーグは中断。サッカーのみならず、あらゆるスポーツが活動停止を余儀なくされた。
言うまでもなく、被災地では今も震災の爪痕は生々しく、福島第一原発の事故も予断を許さない状況が続いている。それでも、少なくとも私たちはスポーツ観戦を楽しむ日常を取り戻すことはできた。ゆえに今年は、Jリーグの開幕を無事に迎えられることの有難みをいつも以上に噛みしめることとなった。
そんな2012年のJ2に、町田ゼルビアと松本山雅が、それぞれ39番目と40番目のJクラブとして加わることになった。実は私は、J2の下のJFLのそのまた下の地域リーグの時代から、両クラブを取材している。あれからフロントや選手の顔ぶれも、さらにはエンブレムも変わったが、こうして晴れてJクラブの一員となったのは、何とも感慨深い。
とりわけ山雅については、昨シーズンのJFLでの戦いをずっと追いかけてきただけに、今日この日を迎えることを、私はずっと心待ちにしていたのである。

宇都宮徹壱

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、’97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など著書多数。『フットボールの犬』(東邦出版、現在は幻冬舎文庫)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。有料メールマガジン『徹マガ』も好評配信中。

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