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日本代表 11年前

日本代表のチーム作りに潜在する2つの難問【サッカー批評 issue54】

text by 西部謙司 photo by Kenzaburo Matsuoka


ザッケローニのチーム作りに潜在する問題点とは【写真:松岡健三郎】

主導権をとれないときは?

 岡田武史前監督は、W杯本大会に入る直前で戦術を修正した。それまでのポゼッション・スタイルから、守備を重視したカウンター型に変更している。そのぎりぎりの決断がベスト16につながった。

 言い方を変えると、それまでのチーム作りに失敗し、ツケが回ってきたので、やむなく行った戦術変更だった。

 ポゼッション型のわりに点がとれず、前方からのプレスが少しでも緩むと、カウンターに対応するにはセンターバックにスピードがなかった。遠藤・中村俊輔仕様のチームが、頼みの2人のコンディションが低下するや、前提のポゼッションすらできなくなって崩壊した。大会前にそれが起こったのはむしろ幸運だったかもしれない。

 ザッケローニ監督のチームは、まだ挫折を経験していない。危ない場面は何度かあったが、チームの崩壊に直面したことはない。

 ザッケローニ監督の緒戦でアルゼンチンと試合をした以外、格上との対戦がない。同格のオーストラリア、韓国とはやっているが、日本の戦い方を変える必要に迫られることはなかった。

戦い方が成立しなかったときの対応策

 だが、日本が主導権を握れない相手はいる。本大会でスペイン、ドイツ、オランダあたりと対戦すれば、そうなるだろう。そうなったときのオプションを用意していない。

 アルゼンチンに1-0で勝利したゲームでは、ボールを支配されながらも、しっかり守ってカウンターを仕掛けていた。南アフリカW杯ではほぼ守っているだけだったのが、的確なカウンターを打てるようになっていた。あのような試合ができれば心配はいらないのかもしれない。

 ところが、いまにして思えばアルゼンチンはそれほど強くなかったようだ。コパアメリカは開催国だったにもかかわらず、ベスト4にも入れていない。

 岡田前監督のときも、オランダ遠征でオランダとある程度の勝負ができた。その後、東アジア選手権でコンディションが低下し、遠藤・俊輔ラインが崩れた途端にそれまでの戦い方が成立しなくなった。現在の代表も、遠藤が抜ければ同様の事態になるかもしれない。また、ベストメンバーを組んだときの日本は、一部の国を除けば主導権を握れると信じたいが、それを証明する機会がないのが現状である。

初出:サッカー批評 issue54

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