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Jリーグ 11年前

横河武蔵野FCが選択した「Jリーグを目指さない」という“灰色の路”【サッカー批評 issue55】

text by 後藤勝 photo by editorial staff

“アマチュア”としてプレーする意義

いくらJリーグ準会員が増えても、社会人にとっての最高峰がJFLであることに変わりはない。依田監督はこう言った。

「アマチュアのトップリーグでがんばるというのが私たちにとっての目標です。もしかしたらJFLがJリーグを目指すチームだけになる事態もあるかもしれない。しかしどんなリーグで戦うことになろうと、アマチュアのトップでがんばるという目標は変わらない」

 10年度末を以て引退、エリースFC東京(今季から関東リーグ1部)で1年間純粋なアマチュア選手の身分を経験し、指導者として戻ってきた立花由貴コーチは言う。

「ぼくらは当たり前のようにやっていましたが、社会人にとってはJFLが至高の舞台であることが、あらためてわかりました。練習試合をJFLのチームとやるだけでもものすごく楽しみにしているし、真剣に挑んでいく。JFLの側からすればただの練習試合でも、社会人リーグの選手からするとそうではない。エリースのみんなも横河とやるのを楽しみにしていた。社会人にそう思われていることがわかったのは再発見。だらけていたらその舞台にはいられなくなる、というのを伝えていかないと」

 Jリーガーと社会人とでは世界観がちがう。Jリーガーは練習と試合以外の時間は基本フリーで兼業しない選手がほとんどだ。しかし社会人は仕事とサッカーの両立を目指している。芸能や音楽の活動ができるのも社会人ならではだろう。依田監督はこう語る。

「サッカーだけではない自立した人間をつくっていきたい。プロの選手たちはサッカーをしていることに根本がありますが、私たちはそれ以外の経験ができることが強み。仕事にしろバイトにしろ、サッカー以外の環境に触れる経験は糧になる」

 立花コーチ同様、引退後の一年間をエリースFC東京で過ごした村山浩史コーチは、そこで社会人サッカーの在り方を再確認した。規約に「社会人が週末に集い、大好きなサッカーを通して、そのコミュニケーションの場を広げ、生涯にわたるクラブライフを築き上げる」というアマチュア精神を謳い上げるエリースFC東京での日々はとても刺激になったようだ。

「エリースの規約に興味があった。魅力に感じました。エリースでも横河と根幹は変わらない。サッカーをすることと仕事をすることの両立です。カッコイイ大人を目指す人が集まるチームで楽しかった。加えて、準加盟と戦うプライド、地域貢献のミッションがあるのが横河なのだと思います。エリースは活動が土日だけだから平日にどう体を動かすかがテーマ。その点で横河は恵まれていると思いました。土日の練習だけでプロを目指すチームと戦う、そのプライドに刺激を受けもしました。いま、横河は存在意義をもう一回考えるときだと思います。魅力あるチームになりたい。プロを目指さないんだけれども魅力のあるチーム。勝つだけでなく、いろいろな価値観があるはずです」

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