横河武蔵野FCが選択した「Jリーグを目指さない」という“灰色の路”【サッカー批評 issue55】

『街クラブから見るJFLの存在意義』
Jリーグを目指しはしないが、地域に根差した市民クラブであろうとする横河武蔵野FC。彼らは、Jリーグ入りを目指すJ準加盟クラブとその予備軍に囲まれたJFLにいまもとどまり、自らが生きる道を模索している。JFLのあり方が変わりつつある現在、この街クラブが投げかけるものとは何か?

2012年12月14日(Fri)16時37分配信

text by 後藤勝 photo editorial staff
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横河武蔵野FCが選択した「Jリーグを目指さない」という“灰色の路”【写真:編集部】

Jリーグだけがサッカーではない

JFLの様子が変わってきている。企業チーム、大学サッカー部、Jのセカンドチーム、Jを目指さないクラブの多くが撤退した。気づけば、J準加盟クラブと、準加盟したいクラブが大勢を占め始めている。昨季の上位ではSAGAWA SHIGA FC、Honda FC、ホンダロックSCらがかつてのJFLらしさを漂わせるのみ。全体としてJ3と形容すべき陣容になりつつある。

 昇降格制度でJ2とつながったのに、準加盟していないチームはその恩恵にあずかることができない。JFL優勝が天井、そこでつかえてしまう。勝っても報われない感覚──モチベーションを維持するのはそうとう難しい。

 古くて新しい問題。優勝しても上がれないもやもやが生じるのは以前からわかっていたことだ。だから彼らは準加盟クラブの行く手を阻むことに意義を見出し、対抗心を掻き立ててきた。水戸ホーリーホックと横浜FC以降では初めてJ2加盟戦線を戦ったザスパ草津に対しても、JFLの企業チームやクラブチームは包囲網を敷いた。2009年にはSAGAWASHIGA FCと横河武蔵野FCが優勝争いを演じ、3位にはソニー仙台FCが入った。ところがこのとき2位だった横河武蔵野FCは過去2シーズン、12位、15位と低迷。また、昨季はホーム武蔵野陸上競技場で一度も勝てなかった。

 横河武蔵野FCの成績が乱高下する理由ははっきりしている。10年は、09年の中心選手であった太田康介と斎藤広野がFC町田ゼルビアに移籍。11年には、10年にチーム最多のJFL9得点をマークした冨岡大吾がAC長野パルセイロに移籍している(そのうえ福島第一原発事故に伴う節電の影響で練習が朝7時からの1時間にかぎられ、この状態が秋まで続いた)。

 対照的に太田、斎藤の移籍先である町田ゼルビアは2シーズン連続で3位に入り、J2加盟を果たしている。J2昇格の可能性があり、選手とプロ契約を交わす準加盟クラブは、いい選手を集める側。NPO法人によって運営されるアマチュアクラブである横河武蔵野FCは、いい選手を供出する側だ。立場は違う。

 昨季の最終節、横河武蔵野FCの依田博樹監督は「Jリーグだけがサッカーではない」と言った。

 様々な背景のチームが集まる全国リーグを謳いつつも、実際にはJリーグを目指すクラブのためのカテゴリーという色合いが強くなってきたJFL。そのなかで、Jリーグを目指さない社会人のクラブは、戦う意義をどこに求めたらよいのだろうか。

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