サンフレッチェ広島のブレない指針(前編)【サッカー批評 issue50】

2012年12月14日(Fri)16時50分配信

text by 小澤一郎 photo Kenzaburo Matsuoka
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現実的な目標はリーグで7位以内

 まずは、本谷社長に昨シーズンを振り返ってもらった。

「成績については少し不満足ではありますが、サッカーの内容については1試合1試合選手はよく頑張ったと思います。あとはクラブと選手にとって、初めての経験というのがACLであり、ナビスコカップのファイナル。優勝というのは難しいですけれど、それに向けて負ける悔しさ、経験を積めたということではいい1年だったという見方もできます」。

 織田部長は、昨季を「貴重な経験ができたシーズン」と振り返りながらも「大きな魚を逃してしまった」と振り返る。

「うちのクラブにとって7位という成績は決して悪い成績ではない。前の年が4位だからといってそれを基準に考えてしまうと、ちょっと厳しい。このクラブ規模ですから、そこは重々承知しているつもりです。そうは言っても、あと少しのところでいろんなものに手が届きそうだっただけに残念な気持ちはあります」。

 それを踏まえた今シーズンの目標だが、織田部長は「建前と本音ということは本当は言ってはいけないのかもしれませんけど」と前置きしながらも「建前の部分ではACLを目指すべくJリーグ3位以内に入りたい。あるいは、ナビスコカップ、天皇杯のタイトルを獲りたい。ただ、うちのクラブの現実的な目標はリーグで7位以内。賞金獲得圏内にいること、居続けることです。これが一番大事なことではないかなと思っています」と語る。

今のサッカーを志向し始めたのは10年前のこと

 闇雲に「優勝」を言うのではなく、本音と建前を使い分けながら目標の2本立てができるところに、フロントとして11年目を迎える織田氏のバランス感覚と広島のクラブとしての成熟度が見てとれた。

 本谷社長はここ数年の躍進について、「これはもう監督の目指しているサッカーを選手がよく理解をしてやっていることに尽きます」と語る。さらに、「ペトロヴィッチ監督がやっているサッカーというのは今後もサンフレッチェが志向していくべきサッカーだと思っています。俗に言う『人もボールも動くサッカー』を監督が代わることがあっても追求します」とまで言い切った。

 スペインで長年欧州サッカーを取材してきた視点から見ると、ここ最近までJリーグにはクラブとしての色、サッカーを明確に持つクラブがないように映っていた。監督が代わるとサッカーのみならず、クラブとしての色まで変えてしまうカメレオン的クラブが多く、一貫性のない場当たり的なクラブ経営が目立っていたように思う。しかし、広島はサッカーのプレーモデルを含めたクラブ哲学、コンセプトを早い段階から明確に定めている。

 例えば、広島サポーター以外に「広島のサッカーは?」と質問しても、本谷社長が表現した「人もボールも動くサッカー」をイメージする人は多いはず。織田氏によればこのサッカーを志向し、定着させようとした時期は、10年前にヴァレリー・ニポムニシ監督を招聘した時期だという。

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