サンフレッチェ広島のブレない指針(前編)【サッカー批評 issue50】

2012年12月14日(Fri)16時50分配信

text by 小澤一郎 photo Kenzaburo Matsuoka
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会社経営とクラブ経営は同じ

 その頃から広島フロントの中には、「地方のクラブとして色を出したい。やっていても、見ていても楽しい攻撃的なサッカーを目指す」という考えが浸透しており、それに基づいた監督選びが行われてきた。2007年のJ2降格時にペトロヴィッチ監督を解任しなかったことは今や美談として扱われているが、クラブ哲学ありきの監督選びを理解した上でこの決断を捉えなければ本当の価値やJクラブの経営のヒントは見えてこないと私は思う。

 ビジネスマンとしても活躍してきた本谷社長は、「会社経営とクラブ経営は同じ」と語る。「商売をするということは商品を売ることであり、サンフレッチェ広島の場合は試合を売ります」。この感覚がフロントにあったからこそ、クラブとして魅力的かつ攻撃的なサッカーを求め、「自分たちで主導権を取って、攻撃を組み立てていくサッカースタイル」(織田氏)を広島のサッカーとして定義した。この点を私は大いに評価する。

 なぜなら、サッカークラブの本当の意味での成功においては、サッカーの定義を含めたクラブ哲学の構築、コンセプトの共有が欠かせないと考えているからだ。世界を見ればバルセロナが、日本ではサンフレッチェ広島がその重要性を実証しているように思う。

哲学に沿った監督に長期政権を託す

 新規のスポンサーやサポーターが増えないと言われる昨今のJリーグにあって魅力あるサッカーを目指し、実践していくことはどんな営業努力をするよりも効果がある。事実、広島はJ2に降格した2008年シーズンも約22万人の総入場者数を維持。J1昇格の2009年シーズンと昨シーズンは、一時1万人強に落ち込んでいた平均入場者数が1万5000人前後で推移している。

 クラブ経営にとって大きな割合を占める人件費においても、無駄が省ける傾向にある。例えば、補強については監督の意向や色を反映させているとはいえ、基本的には広島のサッカーに合う選手を獲得するスタンスで、監督交代毎に大幅に選手が入れ替わることはない。

 また、6年目ということもありペトロヴィッチ監督は外国人監督でありながらクラブのバジェットを強化部の人間並に理解しているという。そのため、外国人選手に限らず獲得できる選手を自らリストアップすることがあるという。補強予算が限られ、補強の失敗が許されないという広島のようなクラブがスピード感ある適材適所の補強を実現させている理由は、目先の結果に左右されることなく哲学に沿った監督に長期政権を託す姿勢に起因している。

【後編に続く】

初出:サッカー批評issue50

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