サンフレッチェ広島のブレない指針(前編)【サッカー批評 issue50】

『トップチームと育成組織の幸福な関係とは? 育成型クラブのロールモデル』
駒野友一、森崎兄弟、柏木陽介、槙野智章などユースから優秀な人材を多数輩出し、また「人もボールも動く魅力的なサッカー」というスタイルが定着したサンフレッチェ広島。「育成型クラブ」の代名詞とまで言われるこのクラブの現在地と未来を探るべく、2011シーズン開幕前の広島を訪ねた。

2012年12月14日(Fri)16時50分配信

text by 小澤一郎 photo Kenzaburo Matsuoka
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ブレない指針、哲学でクラブ強化を続けるサンフレッチェ広島【写真:松岡健三郎】

【後編はこちらから】

及第点以上のシーズンが続いている

 ペトロヴィッチ監督の下で6シーズン目を迎える2011年シーズンのサンフレッチェ広島。初のACL出場となった昨季は、J1で賞金獲得圏内となる7位、ナビスコカップ準優勝など広島としては一定の評価と満足を得られるシーズンではなかったか。敢えて「広島としては」という表現を使ったのは、J1クラブ間の年間予算を比較した時に広島は上位に入らないから。費用対効果という面では「及第点」以上のシーズンがここ数年続いている。

 欧州リーグを見ればわかるように、タイトル争いに加わることができるかどうかはクラブの予算規模ランキングを見ればある程度予想が付く。もちろん、資金力のないクラブが短期的に躍進することはあるし、お金がタイトルを保証することはないのだが、クラブ間に経済的、戦力的な格差が生まれ、各クラブが身の丈に合った経営を行うようになれば、全てのクラブが「タイトルを目指します」と宣言することはなくなるのが普通で、今のJリーグはその移行期にある。よって、クラブ格差やその流れを嘆くのではなく、理解した上で楽しむ時代に突入しているのではないか。

広島のビジョンを語る上で欠かせない「育成型クラブ」というキーワード

 今季のサンフレッチェ広島のスローガンは、「奪取」。昨季届きそうで届かなかった悲願のタイトルを、改めてチーム一丸となって奪い取りに行く覚悟を示している。ただ、今回の取材ではクラブの予算規模を踏まえた上での現実的な目標と5年後、10年後の中・長期的ビジョンを聞くことを目的とした。話を聞いたのはまず、フロントの本谷祐一・代表取締役社長と織田秀和・強化部部長のお二人。

 また、広島のクラブビジョンを認識する上で欠かせないのが、クラブとして早い段階から掲げてきた「育成型クラブ」というキーワードである。移籍金撤廃に伴う新ルール採用でJクラブから軒並み「育成型クラブを目指す」という言葉が聞かれるが、果たしてこれからの育成型クラブに求められる経営要素とは何なのか。広島はそのロールモデルになりえる存在ではないかという仮説を立て、広島ユースの森山佳郎監督にも話を聞いた。

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