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プレミアリーグ前半戦を振り返る―優勝争いのカギを握る香川真司

text by 植田路生 photo by Kazuhito Yamada

圧倒的な攻撃力で首位に立つユナイテッド

 現在、首位に立つのはマンチェスター・ユナイテッドだが、開幕戦を落とす(しかもスロースターターで有名なエバートンが相手だった)など、序盤戦の出来はあまり良くなかった。

 新加入の香川真司はまずまずの出来だったが、いかんせん怪我人が多かった。ヴィディッチ、スモーリング、フレッチャー、フィル・ジョーンズ、ヤングと主力が軒並み故障。1人復帰すれば、また1人故障する、といった野戦病院状態で、キャリックをセンターバックに、バレンシアをサイドバックに起用して急場をしのぐ。

 とはいえ、厳しい戦いも序盤のみ。怪我人が徐々に戻り、ファン・ペルシーとルーニーが噛み合うと攻撃陣が爆発。安定しないディフェンスラインを補って余りある得点力で、それこそ力技で押し切っていった。

 ダービーのシティ戦は、2点差を追いつかれ、完全にペースを握られていたにもかかわらず、試合終了間際のFKをファン・ペルシーが沈めて勝利。また、ホームでのニューカッスル戦は3度もリードを許すも、エルナンデスの活躍もあり逆転でものにしている。

 クリーンシートの試合がここまでわずか4試合と守備陣の不安定さは気になる点ではあるが、12月末には香川が復帰。より勢いを増すであろう圧倒的な攻撃力を止められそうなチームは今のところ見当たらない。

躍進するハマーズと期待はずれのマグパイス

 さて、優勝争いへ向けた展望をする前に、その他のチームにも触れておこう。

個人的に印象に残ったのが、ウェストハム(愛称はハマーズ)。期待された1トップ、アンディ・キャロルは今のところまったく役に立っていないが、昇格組ながらここまで中位をキープしている。

 特筆すべきはその戦いぶりだ。アラダイス監督は元より、キック&ラッシュのオールドスタイルを好むが、今季はさらに磨きがかかっている。ハーフウェイラインより手前からどんどんと前線に放り込む、ある種割り切ったスタイルは見ていて清々しい。

 また、単に放り込むだけでなくノーブル、ノーラン、ディアメの3人のMFが献身的にボールを拾い、チャンスに繋げている。確固たる自分たちのスタイルを持っている点では、なかなか崩れにくい。プレミア残留は射程圏内だろう。

 リバプール、サンダーランド、ウィガンなど期待はずれのチームはたくさんあるが、中でも失望が大きかったのがマグパイスことニューカッスルだ。

 デンバ・バはすでに2桁得点と昨季同様の活躍を見せているが、シセは完全に沈黙。決定機を外している場面も多く、ブレーキになっている。さらに、それ以上に深刻なのは不安定な守備陣だ。キャバイエとコロッチーニが怪我で欠場することがあったにせよ、20試合で37失点はリーグワースト2位タイ(1位はアストン・ヴィラの39失点)。

 ようやく本来の力を発揮してきたサントンが積極的に攻め上がる場面が増えるも、そこをカバーしきれず攻め込まれることが多い。また、ヨーロッパリーグに参戦した過密日程による疲弊からか、ボランチのキャバイエとティオテの2人の運動量が落ちているのも気がかり。チャンピオンズリーグ出場など夢のまた夢。残留へ向けてシフトチャンジしなければ、4年前のように降格という悪夢を見ることにもなりかねないだろう。

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