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Jリーグ 11年前

キングがヴェルディに残したもの~ともに歴史を築いた者たちの回想録~(中編)

Jリーグ元年、スター軍団として一世を風靡した「ヴェルディ川崎」。絶頂期のチームいたカズはどのような存在だったのか? またカズはヴェルディに何を残したのか?元チームメイトである武田修宏氏、元社長の坂田信久氏に話を聞いた。

text by 海江田哲朗 photo by Kenzaburo Matsuoka

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試合会場に彼女を連れてくるときも堂々としたもんです

「最も大きかったのは感覚の違いかな。わかり易くいえば日本人っぽくない。俺、カズさんのこと、中身は完全にブラジル人だと思ってますからね(笑)。極端にいえば、助っ人外国人のような感じです。たとえば、日本人はチームのために自分があると考えるでしょ?

 チームのためなら自分を殺す。カズさんはまったくの逆です。自分のためのチーム。自分が活躍することでチームが勝つという考え方をする。自分を出すことに日本人はどこかで遠慮や妥協をしてしまうものですが、カズさんは周りが何を言おうと築き上げてきたスタイルを変えない。それは少しもブレることがなかった。今でもそのやり方は変わってないですね。チャリティーマッチであろうと専属のトレーナーやマッサーを引き連れて会場入りする。周囲がそれをどう見るかなんて気にしない」


カズが持つ独自のスタイルとは【写真:松岡健三郎】

 そんなカズのスタイルは読売クラブの気風にそぐわないものではなかった。それぞれが言いたいことを言い、やりたいようにやり、自分のプレーを最大限表現する。それでいながら勝つためには団結を厭わない。あらゆることが勝利の一点に集約されていた。読売クラブの強さを支えた根源である。

 武田は笑いながら振り返る。

「試合会場に彼女を連れてくるときも堂々としたもんです。『俺たち付き合っているんだよ。何が悪いの?』と平然としている。試合後、チームバスに乗せて一緒に帰ることもありました。あんなのカズさんだけですよ。その象徴がJリーグ初代MVPの晴れ姿じゃないですか。赤い風船がパンッと割れて、中から真紅のスーツに身を包んだカズ。日本人では恥ずかしさが勝ってしまい、とても真似できない。プロとして魅せることに人一倍こだわるカズさんならではのパフォーマンスでしたね」

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