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日本人がカンプ・ノウでプレーする日(後編)

text by 北健一郎 photo by Kazuhito Yamada

海外でプレーすることのメリット

「海外に行くことによって人間としてたくましく育つことにつながりますし、視野も広がります。僕は海外に行って揉まれることが人間力を高められると思うので肯定的です。なぜかと言うと、今のこの時代に日本だけで物事を考えるのは小さ過ぎる。世界の中での自分がどうかというのを考える力が必要になる。サッカー選手になるだけじゃなく、グローバルに活躍する人間になるということも含めて考えれば、行く価値はあるんじゃないかと思います。僕には子供はいませんが、将来もし自分の息子が行きたいと言うなら連れて行きます」

 ただ、「本人が行こうかどうか悩むくらいだったら行かないほうがいい」と浜田氏はアドバイスする。

「最初はすごいモチベーションで行っても、一定の時間が過ぎれば日常になるわけで、その中で監督に使われなかったりとか、家族と離ればなれで生活しなければならなかったりとか、いろいろなことで悩むんです。行く前に悩んでいるようであれば、行った後にもっと悩みが大きくなる(笑)。『行きま~す』ってぐらいの明るい感じで行っても、それでもいろんな壁にぶつかりますから。でも、それが人間として成長できるということでもあるんですけどね」

 海外に行くだけで「すごい」と言われた時代は終わった。今や、日本人選手たちは世界的なビッグクラブでプレーすることを現実のものとしてとらえている。この先、カンプ・ノウのピッチで日本人がプレーしていても、それはサプライズではない。

【了】

初出:フットボールサミット第9回


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