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日本人がカンプ・ノウでプレーする日(後編)

text by 北健一郎 photo by Kazuhito Yamada

 13歳までに身につけるべきコンセプトは、数学で言うところの足し算や掛け算のようなもの。足し算や掛け算を習っていないのに、方程式を解こうとしてもできるはずがない。カンテラでは、ボールを半身で受ける、ファーストタッチで次の動作をしやすい位置にボールを置く、といったことを徹底的に叩きこむ。もちろんこれはごく一部だ。

 わかりやすい例としては、3シーズン前にバルセロナに鳴り物入りで加入したイブラヒモビッチが挙げられる。セリエA得点王の看板を引っ提げてバルサに入ったストライカーは、得点力を期待されたものの、バルサのサッカーにフィットできず、1年間でセリエAに戻った。

「彼はミランでもユーベでもインテルでもプレーできるし、パリ・サンジェルマンでも活躍している。おそらく、プレミアでもある程度できるでしょう。でも、バルセロナでは全然ダメだったじゃないですか。それは、スペインのコンセプトを持っていないから。日本人選手がスペインで通用しないのも、そこに要因があると思います」

グアルディオラの改革~カンテラからの昇格が最大の補強に


グアルディオラが行った改革【写真:山田一仁】

 現在のバルセロナはチームの大半をカンテラ育ちの選手が占めている。GKバルデス、DFプジョル、ピケ、ジョルディ・アルバ、MFシャビ、イニエスタ、ブスケッツ、セスク、チアゴ、FWメッシ、ペドロ、テージョ、クエンカ……。カンテラ以外の選手はダニエウ・アウベス、アビダル、アドリアーノ、マスチェラーノなど、数えるほどしかいない。

「カンテラ育ちの選手というのは、自分のところで育てたから良いというわけじゃなくて、バルサのコンセプトをちゃんと学んでいるから良い選手なんです。バルサのカンテラ重視の傾向が強まったのは、グアルディオラが監督になってからですね。カンテラの選手を補強したほうが安く上がるし、チームにフィットするとなれば、そっちを獲ろうということになる。それまでは外から獲ってくることも多かったんですが、今はカンテラでまかなえないポジションだけ獲ってくる形になっています。具体的にはセンターバックとアンカーの選手。今シーズン、アーセナルから補強したソングなんかは、まさにそうです」

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