フットボールチャンネル

日本代表 11年前

フランス人ジャーナリストが斬る日本代表「ジャポンはスウェーデンやクロアチアと同じレベル」

text by 田村修一 photo by Kenzaburo Matsuoka

 フランスにとって日本戦は、スペイン戦のための準備の試合だ。スピーディーにパスを繋ぐ日本は、スペインとタイプが似ているから、スパーリングの相手としては最適だった。サコとコシェルニーのCBコンビを試すのは、デシャン監督にとって重要だったし、前線のベンゼマとジルーのペアもそうだ。また中盤も、スペイン戦とはまったく異なる。

 さらにエブラを温存したうえ、リベリーも終盤まで使わなかった。つまりチームの長所である左サイドを、あえて封印して臨んだわけだ。リベリーがスペイン戦であれだけのパフォーマンスを見せたのも、日本戦ではほとんどプレーしなかったからだ。本気で勝ちにいっていたら、フランスは日本に勝っていただろう」

 だが、他方で日本も、選手交代からゲームの流れを作り出した。
「前半は期待外れだった日本が、後半はリズムを作り出せたのは控え選手たちの力で、62分の長谷部誠と中村憲剛から、乾貴士と細貝萌への交代は効果的だった。さらに86分の内田篤人と高橋秀人の投入が決定的で、交代の後で点が入ったのは、決して偶然ではない。
 日本はこの試合に向けて、入念に準備をした。それほどあのカウンターアタックは見事だった。よくコントロールされた成熟したカウンターで、組織的な攻撃だったから、フランスはうまく対応できなかった」

 それこそがザッケローニがもたらしたイタリア流のリアリズムであると、ガトリフは指摘する。
「フランスは、攻守にわたりセットプレーに問題を抱えていた。長い間、セットプレーからの得点はなく、カウンターからピンチに陥るばかりか、スペイン戦もそうだったように相手のセットプレーで失点していた。それもこれも経験不足が原因だ。リベリーのいないフランスは、ごく普通のチームだ」

両サイドの献身的な動きが綻びを生むことも


個の力で違いを作り出せるようになった日本代表【写真:松岡健三郎】

 日本には、個の力で違いが作り出せる選手がいる。それが以前との大きな違いであるとベルドネは言う。
「香川真司や長友佑都、それから遠藤保仁は本物のボランチでとても好きなタイプだ。その遠藤と、カウンターを仕掛けた今野泰幸と吉田麻也が守る中央ディフェンスは安定している。そしてスタートこそ不安定だったが、その後はファインセーブを連発したGKの川島英嗣が、勝利の立役者だった」

 これに対してガトリフは、日本のフィジカルの進化に目を見張る。
「かつての日本は、欧米のチームと対戦したときに、相手の当たりの強さに苦しんでいた。ところが屈強な選手を中盤に並べたフランスに対しても、後半は臆することなくプレーした。この分野で、いかに多大な努力を成し遂げたかがよくわかった」

 同時にガトリフは、フランス戦で露わになった課題も指摘する。
「パスを繋ごうとするのはいいが、ときにボールを簡単に失い、危険な状況に陥る。また献身的な動きがマイナスになることもある。特に両サイドは上がり下がりを激しく繰り返し、綻びが生じやすくなる。足元でボールをキープすることも必要だ。

1 2 3 4

KANZENからのお知らせ

scroll top