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2013補強診断 11年前

2013シーズンのJリーグを占う。各クラブの戦力補強診断 ~大分トリニータ編~

text by ひぐらしひなつ photo by Kenzaburo Matsuoka

渇望される“絶対的な点取り屋”

 つねづね「コンスタントに100%の力を出すのは難しい。80%の状態をいかに長く保つかを目指す」と語る田坂監督だが、この補強により「今季の80%は昨季の80%よりはるかに高い。同じ内容のトレーニングでも明らかに質が違う」と手応えを感じている様子だ。

 とは言っても、新加入戦力のほとんどが、ここ最近は満足な出場機会を得ていなかったり、負傷以来コンディションが上がりきっていなかったりする顔ぶれ。既存戦力を含め、J1での経験不足も不安材料となる。


攻撃の軸となる森島康仁【写真:松岡健三郎】

 最も懸念されるのは、J2時代から引き続きの課題である得点力不足だ。昨季終盤に向けて調子を上げ昇格に貢献した森島康仁をはじめとするFW陣に、今季は長身スピード系の小松塁も加わったが、総合的に見て、ゴール前での力強さにはやや欠けると言わざるを得ない。

 中盤から後ろの力量が上がったことにより崩しのかたちも増えると思われるが、最後の局面で阻まれては勝利は掴めない。チームが成熟していないシーズン序盤には特に、単独でも突破できる“絶対的な点取り屋”の存在が渇望される。オフに右膝を手術した高松大樹の実戦復帰が待たれる。

 昨季もチームとして戦術を存分に体現できるようになったのは終盤になってから。だがその間も、セットプレーやその崩れから、泥臭く得点を奪ってきた。今季はその立役者であった2人を放出。

 精度の高いプレースキックでチームアシスト王となった石神直哉(東京V)と、抜群の空間認識能力でゴール前に飛び込みチーム得点王タイの14得点を挙げた三平和司(京都)に替わる、いや、むしろさらに強力にゴールに直結するホットラインが結ばれるかどうかがカギだ。木村、宮沢正史、村井慎二など、キッカーの選択肢は多い。ゴール前に高さを加えた小松や高木、空中戦に強い深谷友基や阪田章裕といったプレーヤーが、苦境での救世主となるか。

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