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パリ・サンジェルマンは真のビッグクラブになれるか? ~欧州CL・ベスト16の見所~

text by 植田路生

高すぎるイブラヒモビッチへの依存

 2つ目は、あまりにも高いイブラヒモビッチへの依存だ。リーグ戦21試合21得点は立派な成績だが、チーム内2位はガメイロの6点。CLグループステージでも1人で28本ものシュートを打っている(うち2得点。2位はメネズの9本。uefa.comより)。

 何より問題なのは、崩しの局面で彼にボールを集め過ぎてしまう傾向があることだ。当然相手チームはそこをわかっているので対策をしてくるが、それでもチームメートは気を使っているのかイブラヒモビッチを経由しようとする。リーグ1や組分けに恵まれたグループステージ(ポルト、ディナモ・キエフ、ディナモ・ザグレブ)なら“ゴリ押し”することもできたが、ベスト16以降はそうはいかない。

 イブラが止められたとき、違うアプローチができないのは大いに問題だ。行き過ぎた“イブラヒモビッチ依存症”については本日発売の『欧州サッカー批評07』でもレポートを掲載したので是非ご覧になって欲しい。

 3つ目に考えられるのが、経験のなさ。個人としてはイブラヒモビッチ、チアゴ・シウバ、チアゴ・モッタ、マクスウェル、アレックスら経験豊富な選手が揃うが、チームとしてベスト16は未知の領域。8年前に出場したときも、グループステージで敗退し、ここでの戦いをせずに終わっている。

 CLベスト16以降はホーム&アウェイのルールで行われる。追加点を取りに行くのか、守るのか、チームとしての統制がとれていないと勝ち抜くのは難しい。CLでの“戦い方”を知っているバレンシアを相手に、極限まで張りつめた緊張感の中、普段の戦いをできるかどうか。

 パリ・サンジェルマンは金銭的には既に世界でも有数のビッグクラブだ。この先、彼らに必要なのは実績。過去、チェルシーはこの舞台での厳しい戦いを勝ち抜き、欧州での地位を固めていった。

 真のビッグクラブへの階段を登るには、今日の試合(第2戦も含めてだが)に勝たなくてはならない。バレンシア戦は、パリ・サンジェルマンがビッグクラブになれるかどうか、試金石となる一戦になるだろう。

【了】

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