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バートンに騙されるな ~プレミアきっての問題児の実像~

text by 田邊雅之 photo by Kazuhito Yamada

問題行動も謎のツイートもすべて彼が仕掛けた罠

 結局のところ、バートンとはいかなる人物なのか。

 よく引き合いに出されるのはエリック・カントナだ。サッカー選手としての実力は比べ物にならないが、ランボーやカミユをこよなく愛するインテリが観客にカンフーキックを見舞ったエピソードは、たしかにバートンを彷彿させる。

 しかし両者には決定的な違いがある。カントナは内向的な性格の持ち主であり、スキャンダリズムに好んで身を投ずるような真似はしなかった。

 ムラッ気のある性格や、生まれついての目立ちたがりやだという点に限って言えば、バートンはむしろパオロ・ディ・カーニオに近いかもしれない。

 ウェストハム時代のディ・カーニオは、若き日のフランク・ランパードが手本にしたというほどのスキルの持ち主だった。と同時に行動もとにかく派手で、フリーでパスを受け、あとはボールをゴールに流し込めばいいだけの場面で、負傷した相手GKのために試合を止めてみせたこともある。そうかと思えばシェフィールド・ウェンズデー時代には審判を突き飛ばして追放されかかったし、イタリアのラツィオに戻った後は、ファンにナチス式の敬礼をやったことでも大問題にもなった。

 とはいえディ・カーニオに似ているというのも仮説の一つにすぎない。バートンの実像がいかにつかみにくいかは、ユース時代から取材し続けた記者の証言から明らかだ。

「ジョーイだけは最後までわからなかった。機嫌のいい時には本当にナイスガイだし、嫌な顔をひとつせずに、こちらが喜びそうなコメントを出してくれようとする。彼は頭も悪くはないからね。

 ところが神経質になっているときには誰も近づけない。無視されるのはましなほうで、ひどい時は喧嘩も売られたよ。彼の代理人も辛抱強く面倒を見ていたんだが、あまりにもアンコントローラブルだということで、さじを投げてしまったんだ」

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