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稲本潤一が超えてきた日本人の壁 ~海外でプレーする選手に求められること~(後編)

text by 戸塚啓 photo by editorial staff

――自分の頭上をボールが行き交う展開だと、稲本選手の展開力は生かしにくいですね。

「フルハムは多少ボールをつなぐサッカーなのでまだ良かったんですけど、ウェストブロムは蹴って、蹴ってというスタイルだったので……。そのなかでも、自分が中盤でボールを受けてつなぐことで、リズムが変わればと思いながらやっていました」

――個を重視する欧州のスタイルが身体に馴染んでいった一方で、日本代表に合流すると組織重視になる。そこでもまた、適応力が求められたのではありませんか?

「うーん……確かに、日本のほうが組織的な約束事だったり、ここはこうしようというのは多いですね。それは、Jリーグに復帰してからも感じるし。欧州でもそういうところはあるけど、僕が居たチームはあまり戦術にハメ込む感じではなかったから。アイツが行ったからここはカバーするとかいうのも、基本的には個人の判断に基づいていました」

 欧州でプレーする日本人は、言うまでもなく外国人選手である。簡単に言えば“助っ人”だ。同じポジションでも、同じ年齢でも、評価基準は一段上がる。監督に乞こわれて新天地を求めても、指揮官が変わった途端にいきなり出場機会を奪われることがある。Jリーグでも起こりうる現象だが、欧州における監督交代はよりドラスティックな変化をもたらすことが少なくない。

移籍をする際に何よりも優先したもの

――移籍をする際に何よりも優先してきたものは?

「監督の評価ですね。監督と実際に話をして、どういうふうに使いたいのかを聞きます」

――アーセン・ベンゲル(アーセナル)、ジャン・ティガナ(フルハム)、ブライアン・ロブソン(ウェストブロムミッチ・アルビオン)、エリック・ゲレツ(ガラタサライ)、フリートヘルム・フンケル(フランクフルト)……どれも監督の強い獲得要請で実現した移籍でした。

「ただ、監督が代わった途端にまったく使われなくなることもある。シーズン中の監督交代が当たり前の世界ですから、それは避けられないリスクですね。いい選手ならどんな監督でも使ってもらえるので、そうなるのが理想ではありますけど」

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