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稲本潤一が超えてきた日本人の壁 ~海外でプレーする選手に求められること~(後編)

text by 戸塚啓 photo by editorial staff

可能性を探る視野はずっと広く持っている

――ご自身の経験にも照らせば、ブンデスリーガでプレーする選手が増えているのは納得できますか?

「です、ね。これからもっと増えていくんじゃないですか。ドイツとオランダあたりは」

――リーグ・アンはどうでしょう? サッカーのスタイルは明らかにドイツと違いますが。

「僕がいたレンヌは4-3-3のシステムで、ウイングはボールをもったらひたすらドリブルです。1対1は常に勝負する。そのうち1回でも抜いて点に絡めば、評価されるポジションですね。そうやって考えると、ウイングでずっと勝負してきた松井(=大輔)は凄いですよ」

――稲本選手の欧州における出発点となったプレミアリーグで今季から香川真司がプレーしています。

「就労ビザが取りにくいので(苦笑)、他の国より壁は高いかもしれません。ただ、シンジがあれだけ活躍してますから、周囲の見る目は変わってきているんじゃないですか? 日本代表で出ている選手たちも、少しずつ行きやすくなるんじゃないかな、と」

――かつてに比べると、30歳を過ぎても第一線で活躍する選手が増えています。経験豊富な選手の欧州移籍が、これからは増えていくかもしれませんね。

「僕自身、年齢はさほど気にしてないですね。いまはフロンターレと契約していますが、チャンスがあれば、もちろんチャレンジしたい気持ちはあります。可能性を探る視野はずっと、広く、持っていますよ」

 9月で33歳となった日本屈指のボランチは、飽くなき向上心を胸に宿している。欧州移籍の先駆者の一人は、自らの限界を決して狭めたりしない。だから、欧州リーグでの稼働9シーズンという稲本の記録は、やがて破られる日が来るかもしれない。

 本田圭佑や香川真司によって、ではない。他ならぬ稲本自身によって、である。

【了】

初出:フットボールサミット第9回

プロフィール

稲本潤一(いなもと・じゅんいち)
1979年9月18日生まれ、鹿児島県出身。92年、ガンバ大阪ジュニアユースへ入団。97年には17歳6ヶ月で当時最年少でJリーグデビューを果たす。98年にトップチームと契約を結び、01年にアーセナルに移籍。その後、フルハム、ウェスト・ブロムウィッチ、ガラタサライ、フランクフルト、スタッド・レンヌなど、4ヶ国を渡り歩き、2010年より川崎フロンターレに加入。日本代表では99年にU-20ワールドユース準優勝、00年にシドニー五輪ベスト8などに貢献し、00年カールスバーグ杯でA代表デビュー。02年、06年、10年W杯メンバー。国際Aマッチ82試合出場5得点。

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