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稲本潤一が超えてきた日本人の壁 ~海外でプレーする選手に求められること~(後編)

まだ「海外組」が希少な時代、欧州でプレーするということはどれだけ大変だったのか。そして、欧州への移籍が頻繁になったいま、海外で成功するために選手が考えるべきことは何か。欧州4ケ国を渡り歩き、9シーズンプレーしてきた稲本潤一(川崎フロンターレ)に話を聞いた。

text by 戸塚啓 photo by editorial staff

【前編はこちらから】 | 【フットボールサミット第9回】掲載

プレーの評価基準の違い

 監督が要求するチーム戦術を実践する以前に、日本と欧州には個人戦術の違いが横たわる。特徴的なのは1対1の局面だ。チャンスがあれば一人でもボールに食いつく欧州に対して、日本は組織でボールを奪う意識が強い。オフ・ザ・ボールでの献身的なハードワークが日本ほど評価されないところもある。


稲本潤一【写真:編集部】

――日本と欧州では、選手の評価基準に違いが見受けられます。

「確かにそうですね。たとえば、フリーランニングが評価されるというのは、欧州ではあまりなかった。すごく長い距離を走って、相手を引き出して、空いたスペースに味方が入っても、動いた自分が評価されるというのは、それほどなかった気がする。

 マンUとかアーセナルならあるのかもしれないですけど、僕がいたチームはそうではなかったですね。1対1でボールを奪うとか、対面する相手を抜くとか、プレミアリーグならバックパスをさせるとか、そういうところがすごく評価されました」

――日本のメディアでは「攻撃的なボランチ」として評価されてきましたが、稲本選手自身は「守備からリズムを作る」と話していた。プレミアリーグ移籍後も意識は変わらなかったと思うのですが、だとすると、セントラルミッドフィールダーとして評価を得にくいこともあったのでは?

「そう、ですね。プレミアではとくに。下位のチームになるほどキック&ラッシュの傾向が強くなるので、どうやって自分をアピールするのかは考えていました。中盤を省略するような展開でも、自分はボールを受けてしっかりつなぐことが他の選手より秀でていると思っていたので、そこはきっちりやるように意識して。

 でも、ロングボールを入れられたあとのこぼれ球を拾うランニングを、少しでも怠ったらダメです。ボックス・トゥ・ボックスの展開になると、すごく大変でしたねぇ」

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