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香川真司がレアル戦で輝くために必要な3つの理由 ~欧州CL・ベスト16の見所~

text by 植田路生 photo by Kazuhito Yamada

味方が理解してきた香川の“リターン”

 1つ目は、マドリーの置かれた状況だ。アウェイゴールを許してしまったことで、マドリーは得点が必須になった。極端に攻め急ぐ必要はないが、攻撃に比重を置かなければならないのは事実。1stレグではケディラ、もしくはシャビ・アロンソのどちらかが攻めずに残り、香川にボールが渡った瞬間に素早くチェックしていたが、そういったリスクを負わない守り方に綻びが生じる可能性はある。

 そのときに、上手くラインの間に入り、前を向くことができれば、香川らしいプレーが見られるだろう。先のノリッジ戦ではDFとMFの間に上手く入ることで自由にボールを持つことができた。タイプは違うが、かつてのカントナを彷彿とさせるようなボールの受け方であった。初戦よりはそのような香川らしさを見られる機会はずっと増えるだろう。

 2つ目は、香川が自信と取り戻したこと。ノリッジ戦での3得点は、すべてゴールキーパーの逆を突いたものだ。これまでの香川はどこかプレミアの空気に合わせようとしたのか、らしくない力みのあるシュートが多かった。

 だが、香川は本来ドルトムント時代からシュートの上手い選手。キーパーの動きを冷静に見極め、時にキーパーやDFが転んでから、流し込むゴールは何度も見られた。自分の得意な形を思い出し、妙な力みは消えた。ノリッジ戦のように落ち着いてプレーできれば、マドリーの選手であれど、止めるのは難しいのではないだろうか。

 3つ目は――これが一番重要なのだが――ルーニー以外のチームメートが香川をようやく理解してきたことだ。香川のプレーの特徴の1つに、リターンがある。縦のパスが入ったときに、香川は一旦、そのボールを戻し、動き直す。マークのギャップをつくるためだが、今までは味方があまり意図を理解しておらず、ただ戻すだけの行為になってしまっていた。

 ところが、前述の試合では、味方がリターンに素早く反応。動き直した香川に再びパスするか、マークがズレてよりフリーになっている選手へ展開する場面が見られた。ハットトリックしたことで、さらにチームメートからの評価も高まった。1stレグよりも確実に多くのパスが回ってくるだろう。

 レアル・マドリーは言うまでもなく手強い相手だ。だが、今の香川は絶好調。ドルトムントでの香川はコンディションがピークであれば、バイエルン・ミュンヘンでさえ手玉に取っていた。今日の試合では、ドイツ時代、あるいはそれを上回るような輝きをきっと見せてくれるはずだ。

【了】

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