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Jリーグ 11年前

Jリーグに訪れた久しぶりの“本物”。大宮の快進撃を支える、スロベニア出身の強力2トップ

text by 粕川哲男 photo by Kenzaburo Matsuoka / Masahiro Ura

Jリーグに久々にやってきた“本物”

 ズラタンはフィジカルが強く、スピードがあって、チャンスメークの能力も高い。ノヴァコヴィッチは典型的フィニッシャーで、ゴール前で最後の仕上げができる。指揮官が大宮で取り組んでいる「個人の能力に頼るのではなく、チームとして戦う」というスタイルに欠かせない忠誠心も申し分ない。

 岡本武行GMは、「ズラタンとノヴァがスムーズにチームに馴染んだ背景には、監督と国籍が同じという部分もあるかとは思います。しかし、チームに貢献できる選手は誰か、という部分を一番に考えて彼らを選択しました。この2人はチームのために戦ってくれる。そんな確信があったのです」と、獲得理由を話してくれた。

 ベルデニック監督は自分のサッカーを完成させるために、組織的サッカーを展開しながらゴールという結果を残すために、母国から2人のアタッカーを呼び寄せたのである。

 ズラタンとノヴァコヴィッチがJリーグに久々にやってきた“本物”だと分かるまで、それほど時間は必要なかった。来日直後の夏場こそ実力を発揮できない試合もあったが、苦手の暑さが和らぐと輝きが増す。

 ノヴァコヴィッチは第26節の札幌戦、ズラタンは第30節の柏戦でハットトリックを決めるなどして、終盤の快進撃に貢献。ボタフォゴへ移籍したラファエルの穴は、一切感じられなかった。

 昨季は東慶悟がいたためトップ下を置いた4-2-3-1で戦うことが多く、ズラタンとノヴァコヴィッチが前線でコンビを組む機会は少なかった。だが今季、指揮官が開幕から4-4-2の布陣を継続しているため、スロベニア代表の2トップが攻撃をリードしている。第8節を終了した時点で3得点ずつ決めている2人の活躍がなければ、19試合連続不敗のJリーグ新記録、J1リーグ5連勝のチーム新記録が達成されることはなかっただろう。

 とはいえ、本人たちは2つの新記録や単独首位にも浮き立つ様子はなく、来日当初から不変の献身性でチームプレーに徹している。今年3月、W杯欧州予選のアイスランド戦に招集された際にも、2人が気にかけたのは大宮のことだった。

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