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日本代表 11年前

オシムのメッセージ ~遠藤が真に偉大な選手になるために~(後編)

日本代表監督時に遠藤保仁を重用したオシム。彼は遠藤の何を評価し、そして何が足りないと感じていたのか。日本より遠く離れた地にいるオシムに話を聞いた。

text by 田村修一 photo by Kenzaburo Matsuoka

【前編はこちらから】 | 【フットボールサミット第6回】掲載

「危険な野心のない遠藤は、誰からも愛され、尊敬もされる」

――彼は性格的にも飄々としていて、それがチームに落ち着きを与える反面、あまりアグレッシブとは言えません。

「優れたパーソナリティを持っていたと思うが、チームがそれを十分に活用したかどうかはまた別だ。

 また、性格の強さは必要だ。自分の意見がはっきり言えるかどうか。遠藤にはそうなって欲しかったが、彼はとても繊細な若者であるし、ちょっと脱力したような弱さもある。また自分自身に対しても他人に対しても、謙虚すぎるという印象がある。

 いろいろなもの――課題や障害を、積極的に乗り越えようとはしない。それこそ彼が実現すべきことだ。何故なら遠藤は、本物の才能に恵まれているのだから。だからこそ他人よりも秀でること、困難な状況では普段以上に努力して、自分のすべてを出し尽くすことを。常にそうする必要はないが、ときに自分の存在を証明して、さらに先に進めねばならないときがある」

――たしかに好青年であることが、サッカーで常にプラスに働くわけではないでしょうが。

「例えば本田圭佑は、日本で唯一とも言える個人主義的傾向を持つ選手だ。サッカーでは個人主義も必要だし、個人主義的にプレーする選手も必要だ。本田がそうしたプレーをするのは認めるにしても、他の選手が彼に同調して、同じようにプレーを始めたら目に余る。

 だからこそ遠藤には、チームのパトロンになって欲しいと私は願う。プレーの面で彼は最高であるのだから、彼の判断でプレーを構築する。ガンバのようにプレーすることを、彼も好んでいるはずだ。

 遠藤にとっては、パトロンになるのは簡単なことで、チームメイトが信頼を寄せればそれでいい。極めて冷静ですべてに的確、さらには好青年でもある。スターになりたいという危険な野心も彼にはない。彼の年齢では驚くべきことだ。だから誰からも愛され、尊敬もされている。若手は彼を手本にすればいい。そして遠藤にとっても、若い選手と一緒にプレーすることが、彼らに支えられてさらに優れたプレーを実現するチャンスとなっている。そういう人生も悪くはない」

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