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ブンデスリーガ時代の到来か? CL決勝ドイツ対決から考察する欧州サッカーの覇権争い

text by 西部謙司 photo by Ryota Harada , Kazhito Yamada / Kaz Photography

欧州リーグを動かす中東マネー

 ブンデスリーガは早くから健全経営で知られていた。赤字が許されないので、借金したくてもできなかったのだ。トップクラブのバイエルンといえども、プレミア勢やレアル、バルサに対して、大物選手の獲得競争で勝ち目がなかった。

 しかし、ライバルが経営健全化を余儀なくされて緊縮モードに入ると、ドイツ勢は相対的に地位が向上していった。ユナイテッドがクリスティアーノ・ロナウドをレアルに売り、アーセナルはアンリやセスクを手放し、リバプールは補強競争から脱落するなど、補強でチームを作ってきたプレミア勢に勢いがなくなってきている。今季はベスト8に1チームも入れなかった。

 リーグ全体の観客動員数を経済力のバロメーターとみれば、ブンデスリーガとプレミアリーグが2大勢力となり、セリエAの挽回は難しい。ブンデスとプレミアの成功は、インフラの整備が大きいからだ。

 とくにドイツは2006年W杯開催でスタジアムが一新された。もともと他国のような一極集中型の人口分布ではなく、衛星型の都市構成なので地方クラブにもそれなりの人気と経済力があるのは強みだ。

 ただ、CLの覇権を探るならリーグの枠を外して見た方がいいかもしれない。

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ACミランの胸にもエミレーツの文字が【写真:山田一仁】

 現在の欧州リーグを動かしているのは中東マネーだ。中東の投資グループがオーナーとなって補強ぶりが目立つのはマンチェスター・シティとパリ・サンジェルマン。エミレーツ航空は、各国リーグのトップクラブをスポンサードしている。

 アーセナルはスタジアムにエミレーツの名が付いていて、PSG、ミラン、HSVのユニフォームにもエミレーツの文字がある。来季はレアルも仲間入りする。バルセロナはユニフォームにスポンサー名を入れない主義だったが、現在はカタール財団と契約している。

 いまやCLはドバイ、アブダビ、ドーハと深く結びついているが、バイエルンとドルトムントはこの系列ではない。健全経営のドイツ勢と中東マネーグループ、この2大勢力が覇権を争っていくのではないだろうか。

【了】

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