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サー・アレックス・ファーガソンの奇妙な冒険〈番外編〉「彼はどこにでもいて、どこにでもいる」第三回

text by 東本貢司 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

ファーギー・タイムは79秒?

 まず、前者からいこう。「ファーギー・タイム」とはユナイテッド以外のサポーターが言い習わしてきた“皮肉用語”で、そのココロは「90分(直前)にユナイテッドが負けている場合、レフェリーの配慮でインジュリータイムが延長される、“相当”時間」のこと。「相当」とは「ユナイテッドが追いつくか逆転するに十分な」という意味だ。

 英国営放送局BBCがご丁寧にこの「ファーギー・タイム」を“測定”したところ「79秒」(平均?)という数字が出た。もちろん“この種”の延長による恩恵を受けるのはユナイテッドだけではないが、ファーギーのチームは抜きん出て多いのだとか。

 ちなみにBBCは、1999年チャンピオンズリーグ決勝の劇的な逆転勝利は、この「ファーギー・タイム」さまさまの結果だと主張している。無論英国流のジョークである(念のため)。

 もう一つの「スクウィーキー・バム・タイム」は多分、読者のほとんどが初耳だろう。筆者は以前、これを「ろくでなしの季節」と訳したが、もちろん意訳、いや超訳で、正直なところ、辞書の類を手あたり次第当たってみても適切な訳語が見つからなかった。

 ごく最近判明した限りでは、この言葉が初めて使われたのは2003年の3月であり、当時首位アーセナルとの差をユナイテッドが詰められるかどうかの、手に汗握る状況に由来する「シーズンのクライマックス」を指す表現としてだという。要するに「特例」、すなわち、当時の「ファーガソンのやきもきする独特の仕種」が、事実上の語源となったのである。

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