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サー・アレックス・ファーガソンの奇妙な冒険〈番外編〉「彼はどこにでもいて、どこにでもいる」第三回

text by 東本貢司 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

想像を絶する強烈な個性

 なお2005年、『コリンズ・イングリッシュ・ディクショナリー』が初めてこの言葉を公式に登録、「特に首位を争う複数チームのリーダーの視点から見た、リーグ・コンテストにおける張りつめた最終ステージ」と定義付けている。

 また、ウィキペディアの付記には「エキサイティングなスポーツイベントを見守りながら、席で体を前後させて身もだえする様子」とある。こちらの方がより生の言葉の意味を伝えているのは言うまでもない。なお“squeaky bum time”を直訳すると「キーキー泣き言を垂れるダメなやつがここにいる」。どうやら、ファーガソンを語る言葉に好意的なものはめったにないらしい。

 ファーガソンは“新語”まで生み出してしまう。そりゃ、27年近くも政権を維持してきたのだから、そんなこともあるだろうって? では、彼よりもはるかに長く監督の座に居座り続けたギー・ルー(フランス・オセール、44年間)、ウィリー・メイリー(セルティック、43年間)にも同様の逸話があったかといえば、記録は特に何も語ってくれない。

 つまりは、やはり「想像を絶する強烈な個性」のなせる業というべきなのだ。そしてそこには、人並み外れた「負けず嫌いの怖いもの知らず」の性格ががっつり働いている。

 彼自身の“証言”――「子供の頃、高い壁の上から飛び降りる遊びが好きだった。あちこち回って“制覇”しまくったものだ。危ないだろうって? 危ないからやるんだよ。子供なんて皆怖いもの知らずなんだから」

 ある意味でファーガソンは、子供の向こう見ずな勇気を常に心の中に燃やしながら生きてきたと言えるのかもしれない。

【第四回に続く】

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