プレミアリーグを席巻するベルギー人選手。優秀な選手を輩出する育成改革と欧州随一の適応能力とは?

近年のプレミアリーグにおいて、面白い現象がある。ベルギー人選手の急増だ。今ではレギュラー格の選手は10人を超えるという。なぜベルギーは優秀な選手を輩出できているのか? その背景に迫った。

2013年06月09日(Sun)10時47分配信

text by 山中忍 photo Kazhito Yamada / Kaz Photography
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国際大会の惨敗を契機に育成改革。下部組織に22億円を投じた例も

 今季のプレミアリーグでは、相次ぐ大物引退の他にも、時代の変遷を示す出来事が1つ。ベルギー人勢力の台頭だ。その数は、サンダーランドのゴールを守ったシモン・ミニョレから、アストン・ビラの最前線に立ったクリスティアン・ベンテケまで、先発レギュラー格だけで10人を超えた。

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マンチェスター・シティのキャプテンを務める、バンサン・コンパニ【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

 存在の重要性は、マンチェスター・シティのバンサン・コンパニに象徴される。5月上旬、クラブがロベルト・マンチーニ監督を解雇した裏には、キャプテンを務めるベルギー代表CBとの確執があったとされているのだ。

 かつてない“ベルギー・ブーム”の理由は、「イングランドの環境に早期適応が可能な欧州内に、南米産と同等の能力の持ち主が揃っているから」。これは、チェルシーで、オーナーのアドバイザーとしてスカウトも兼ねる、ピエト・デ・フィッセルの発言だ。

 今季のチェルシーは、ティボ・クルトワ(アトレティコ・マドリー)やロメル・ルカク(WBA)らのレンタル修行組と、ユース所属組を合わせ、計8名ものベルギー人選手を契約下に置いていた。

 プレミア勢を惹き付ける「能力」は、本国における10年来の努力の賜物だ。協会を先頭とする育成改革は、母国共同開催のEURO2000と、続く2002年W杯でのベルギー早期敗退を受けて始まった(2002年のベスト16を最後にEUROとW杯はすべて予選敗退)。

 国内のコーチ資格基準が見直され、ユース代表レベルでは、4-3-3システムが基本に据えられた。オランダで成功実績があり、テクニック重視の指導に適しているとされるシステムだ。昨夏に加入したトッテナムで、最終ラインからの攻め上がりが目を引いたヤン・フェルトンゲンは、その隣国の名門アヤックスに育成年代で引き抜かれた元優等生だ。

 ピッチ上での「適応」には、エバートンのマルアン・フェライーニに代表される、フィジカルがプレミアにお誂え向きとなる。194センチ85キロのボランチ兼ターゲットマンはモロッコ系だが、ベルギーには一般に身体能力の高いアフリカ系の移民が多い。

 約23億円での5年前の移籍(スタンダール・リエージュからエバートンへ)は、売り手にも旨味があることを示す好例でもある。協会と足並みを揃えて育成環境の改善に費用を割いたクラブにとって、移籍金収入は有効な資金回収手段だ。

 中でも、“TVマネー”で潤うプレミア勢は恰好の取引相手。下部組織に約22億円を投じたとされるリエージュは、エバートンから得た当時ベルギー史上最高の移籍金収入で、一気に資金を回収している。

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