コンフェデで盛況のブラジルでなぜW杯反対デモが? 現地記者が要因と現状を解説

2013年06月22日(Sat)16時50分配信

text by 沢田啓明 photo Kazhito Yamada / Kaz Photography
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2014年W杯への影響は?

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スタジアムではセレソンへ熱い声援が送られている【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

 事態を沈静化するため、サンパウロ、リオなど数都市で公共交通機関の運賃値上げが撤回された。しかし、民衆の要求はすでに単なる運賃値上げの問題ではなくなっており、この原稿を書いている21日時点で、デモが沈静化する兆しはない。

 今後、何が起きるかを予測するのは極めて困難だ。ワールドカップ開催のためにすでに建設されたり建設されつつあるスタジアムが“無駄遣いの象徴”として襲撃を受ける可能性もあり、その場合はデモ隊と警官隊の間で激しい衝突が起きるかもしれない。そうなった場合には、来年のワールドカップ開催が危うくなる可能性が現実味を帯びてくる。

 中南米の大多数の国は、一握りの上層階級が権力と富を独占し、民衆にはフットボール、音楽などの娯楽を与えることで支配を維持してきた歴史を持つ。その中でブラジルは1985年に軍事独裁政権から民政へ移管して以降、民主主義国家の道を目指し、2000年代に入ってから著しい経済成長を実現してきた“南米の優等生”だ。

 ただし、好況の恩恵を受けて平均所得が上昇し、失業率が下がったとはいえ、収入、教育、医療サービスなどにおける社会格差はまだまだ大きい。今回の運動は、積年の社会的不公正に耐えてきた庶民が憤懣を一気にぶちまけたものと考えていいだろう。それだけに、問題の根は極めて深い。

 デモ隊は、「我々はセレソンに反対しているのではない。不正に反対しているのだ」というプラカードを掲げている。彼らにしても、大多数がフットボールを愛し、セレソンを愛するブラジルの庶民だ。ワールドカップ開催中止を本気で望んでいるとは思わない。

 20年以上この国に住み、明るく陽気で寛容で世界中の人を国籍、人種、宗教の分け隔てなく受け入れる懐の深さを持つブラジル人を敬愛する者として、この国が幾多の社会問題を解決する方向へ向かい、その上で一年後、世界のフットボールの祭典を見事に成功させることを心から願っている。

【了】

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