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コンフェデで盛況のブラジルでなぜW杯反対デモが? 現地記者が要因と現状を解説

コンフェデで盛り上がるブラジルで、W杯へ反対するデモが行われている。活動は日に日に大きくなり、一部は暴徒化している。なぜサッカー王国でW杯への反対が起きているのか? 原因と背景を現地記者が解説する。

text by 沢田啓明 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

デモ隊の要求とは何か?

 6月15日に首都ブラジリアで行われたブラジル対日本のコンフェデ杯開幕戦の試合前、会場である国立競技場の外側で数百人の若者が「我々にもFIFA基準(注:高水準の意味)の教育、保健、公共交通機関を与えよ!」といったプラカードを掲げてデモ行進し、警官隊と一触即発の状態にあるのを見た。

 また、スタジアムでジウマ・ルセフ大統領が挨拶した際、地元観衆が激しいブーイングを浴びせて不満を表明するのを目撃した。

 それから2日後、ブラジリア、サンパウロ、リオ、ベロオリゾンテ、クリチーバなど主要都市で計24万人がデモを行い、20日には80都市以上で約140万人がデモに参加する全国規模の運動に発展した。

 ただし、一部が暴徒化して政府関係の施設を襲ったり民間の商店で商品を略奪する騒動に発展したものの、概ねデモの参加者は平和的であり、警官隊と衝突して多数の死傷者が出ているわけでは全くない。

 そもそもの発端は、6月2日、サンパウロの市内バスの運賃が値上げされたことに抗議して6日に最初の小規模なデモが起きたこと。コンフェデ杯開幕を控えた13日以降、これが他都市に広がり、徐々に規模を拡大していった。

 デモ隊の要求は地域によって多少異なるが、概ね、公共交通機関の値上げ反対とサービスの向上、教育システムの改善、医療サービスの向上などであり、同時に長年の財界の癒着の解消と汚職根絶も求めている。

 これだけなら、このデモはコンフェデ杯やワールドカップとは何の関連もない。しかし、デモ隊は、当初は政府やブラジル・フットボール協会が「スタジアムの建設・改修などワールドカップ開催準備には、公的資金を一切用いない」と約束しておきながら最終的には政府がスタジアムの建設・改修工事の大半を公的資金で賄った“約束違反”に憤った。

 そして、コンフェデ杯が世界の耳目を集めることを利用し、試合が行われる会場の近辺もしくはその町の中心街などでデモを行うことで自分たちの主張を強烈にアピールしたのである。

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