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連載コラム 11年前

W杯前に知っておくべきブラジルフッチボール。本田とジーコの知られざる関係、そしてカズの足跡

本田圭佑の所属するCSKAモスクワは特殊なクラブだ。ジーコも監督時代、かなり不遇をかこっていたようだ。ブラジル人の移籍への考え方は日本人とは違う。カズの事例から迫ってみる。

観光ビザで働いていたジーコ

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ロシアスーパーカップを持つジーコ氏【写真:田崎健太】

 しばらく本田圭佑のACミランへの移籍が話題となっている。移籍がこじれていることの根幹には彼の所属するCSKAモスクワというクラブの特殊性があるように思える。

 ぼくはジーコが監督を務めていた2009年5月にCSKAを訪れたことがある。モスクワ市郊外にあるクラブハウスに行ってみると、チェロキーの高級車がずらりと並んでいた。クラブには自動車ディーラーがスポンサーについており、ジーコを初めとした外国人には、チェロキーが貸与されているという。

 練習後、ジーコとモスクワの中心地で食事をしようという話になり、車に同乗することになった。ジーコの車は他の選手よりも高級そうだった。

「いい待遇だね」

 ぼくが言うと、彼はハンドルを握りながら「そうでもないんだ」と唇を歪めた。

「これ見てみろ」

 そう言うとグローブボックスに手を突っ込んで、何かを取りだした。パスポートだった。そして、片手でパスポートをぱらぱらとめくった。

「これがロシアの観光ビザだ。CSKAモスクワという有名なクラブの監督が観光ビザで働いているなんて信じられるか?」

「観光ビザ? 嘘でしょ」

 ぼくが応じるとジーコはパスポートを鼻先に突きつけた。彼の言った通りだった。

「お前のビザと同じだよ。だから、俺は国外で試合がある時は、そこでビザを取り直している。ありえないだろ? こういう手配をききちんとしてくれないんだよ、このクラブは」

 観光ビザで入っているため、妻のサンドラもまた観光ビザとなってしまう。そのため彼女はロシアに長期間滞在できない。ジーコは家事が苦手で、全てを妻に任せている。日常生活に不都合が出ていた。

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