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【特集:ボーダーレス化する世界】中東の帰化を巡る、札束と国籍(その1)

text by 編集部 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

国籍の取得には高いハードルが

――それぞれ強いライバル意識があるんですね。

「湾岸諸国同士が戦うガルフカップ(中東選手権)という大会がありますけど、すごく盛り上がりますよ。ましてやイランの場合はちょっと厄介でアラブの国はそこまでイランを嫌いじゃない。それでもイランはアラブ諸国のことを嫌いだから複雑です。過去にバーレーンなどを占領していたイラン人が未だに『我々の国土だ』と言っていることが背景なんです」

――非常に複雑ですね。次に中東における国籍取得に関する話を聞かせて下さい。

「これはもう湾岸諸国に関しては基本的に王様絶対主義ですから。王様の一声で全部決まります。良くも悪くも独裁なので。日本だったら極端な話、日本国籍を持っていて犯罪をせずに一定の年齢になれば、誰でも首相になれます。ただ中東はなれません。これも王族の中から決まります」

――となると国籍取得もハードルが高そうですね。

「中東といっても湾岸諸国に限定ですけれども、20年か30年ちゃんと働いても普通の人に国籍が与えられることはないんです。その要因としては、例えばカタールは人口の8割が外国人の労働者で占められているので、国籍を持っちゃったら……」

――立場が逆転してしまいますね。

「そうです。革命になります。彼らとしてはレストランやホテル、タクシードライバーや建築などの仕事は外国人がいないとやっていけません。湾岸諸国の自国民は良く言えばエリートで、悪く言えばニートのような引きこもりなんです。働いていませんが、普通に生活しているだけで政府から月200万円ぐらい貰えますから。

 一応、名目上は国家公務員という形。判子やサインをするだけの仕事だったりする。やっぱり上手いのが、本当に自国民を守る法律が徹底されていること。例えば、会社の役員は全部自国民でなくてはならない規定があります。

 湾岸諸国はオイルもガスもありますし、UAEの場合は金融もあるから、外資系企業がどんどん来るじゃないですか。それでどうするかというと、外資系企業はお金を払って『じゃあモハメドさん社長になって下さい』『ムバラクさん、専務になって下さい』と役員になってもらってサインだけしてもらいます。企画とか経営には一切参加しませんよ。だからカタール人などに生まれれば、これほどオイシイことはありません」

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