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【特集:ボーダーレス化する世界】中東の帰化を巡る、札束と国籍(その1)

text by 編集部 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

スポーツ選手は国籍を取りやすく、生活も守られる

――そういうなかでも国籍を取れる外国人はいますか?

「それは本当にもうスポーツしかないですね。日本ですと猫ひろしの問題もありますけれども、カタールやオマーン、バーレーンの陸上競技ではケニアやエチオピアなどからどんどん選手を取ってきています。他にウガンダやタンザニアといったアフリカ人ランナーは中東に行きますね」

――一部のトップスポーツ選手は帰化できて、彼らは生涯にわたって生活を保障されているのでしょうか。

「守られています。衰えていっても、功績があればコーチとか、役員とかになれると思います。『王族と喧嘩しない』とか『宗教的に逸した行為をしない』とか、そういうのが条件になってきますけれども」

――帰化選手はイスラム教徒にならなければならないのですか。

「いや、それはないですね。ただ、もし現地の女性と結婚する時にはイスラム教徒にならないとダメですよ。カタール人はやっぱり純血のカタール人としか結婚しませんので。レバノンのような、いわゆる戒律の緩いアラブの国々でも結婚する場合はならなくちゃダメですね。

 トルシエはモロッコ人の孤児を引き取って養子にしたんです。モロッコ人の子供はイスラム教徒だから、父親や母親もイスラム教徒にならないといけませんでした。それでトルシエはオマル・トルシエになりましたね。ブルーノ・メツもセネガル代表監督時代に黒人の女性と結婚してイスラム教徒になりましたよ」

――カタールが顕著ですけど、外国人選手を帰化させようと試みたのはいつ頃でしたか?

「カタールは本格的に90年代後半からはじめたんです。それ以前にもスーダンから連れてきていましたね」

――スーダン人を子供の頃から選手として、ですか?

「そうですね。カタール人にしてしまって育てていく。スーダン人は同じアラブの国でアラビア語を話しますから都合がいいんです。砂漠の民として移動を繰り返しているから元々カタールにもスーダン系住民が住んでいます。何代前から住んでいるのかはわかりませんが、肌の色が黒い人というのはスーダン系の人なんです。サウジアラビアにもいますが、身長190㎝ほどあり、特徴としてすごく身長が高いんです」

【その2へ続く】

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