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【特集:ボーダーレス化する世界】中東の帰化を巡る、札束と国籍(その1)

中東諸国における帰化とはどのようなものか? アフリカやヨーロッパとも密接に関わる事情について、諸外国に精通するフリーライター・森本高史氏に話を聞いた。

text by 編集部 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

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中東内にある国の個性

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中東での戦いは常に難しさがつきまとう※写真は2013年2月のイラク戦【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

――中東とアラブをどうしても混同しがちですが、それぞれの括りは厳密にあるのでしょうか。

「アラブはアラブ民族の国だからアラブとなっています。アラブ連盟があり、21ヶ国1機構が加盟しています。そこには、UAEからアフリカのモロッコ、モーリタニアなどが所属していて、中東は地域の括りですが、大体はこのことを指します。

 民族的な区分でいくと、イランがまずペルシャ人。それでシリアやヨルダン、レバノンなどは同じアラブ人。彼らアラブ人は色の黒い人も白い人も、ちょっと焼けている人もみんな同じです。それはイランやサウジアラビア、イエメンなどを含めて生まれ育った人という共通認識があります。

 ただ経済的に言えば、湾岸諸国という言葉があるようにオマーンやUAE、カタール、バーレーン、サウジ(アラビア)、クウェートといった国はお金持ちであって、シリアやレバノン、ヨルダンなんかは貧乏な国です。そこでまた違ったメンタリティがあります。貧乏な国からすると、裕福な国々に対してすごく国民的感情というか、アンチみたいな風潮がありますよ。

 例えば、アテネ五輪の最終予選で日本、レバノン、バーレーン、UAEのグループで対戦しましたが、UAEとレバノンの試合では乱闘が起きています。よく中東同士は試合を操作するって言われていますよね。ただロンドン五輪の予選も日本とシリアが競っていても、バーレーンはシリアとの試合に勝ったじゃないですか。

 彼らは勝ちを献上するほど優しい人達じゃないですからね。同じアラブ人だから絶対勝たなくちゃいけないんです。韓国と北朝鮮、イングランドとスコットランドとか以上にもっと国民感情がありますから、絶対に手を抜かないですよ」

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