本人からの“復帰”志願
ネルシーニョの性格から「慰留は難しい」と感じていたものの、吉田ダイレクターは冷却時間が必要だと考え、ネルシーニョに考える時間を与えた。その時間を与えても辞意を貫き通すようであれば、おそらく本格的に監督人事へ動き出したことだろう。
すると9月2日、ネルシーニョから「もう一度監督をやらせてほしい」という旨の連絡が届いた。5日に行われた記者会見でも「鹿島戦の敗戦が非常に大きなものだと痛感し、非常にフラストレーションが溜まり、熱くなり、感情的に行動してしまった」と自戒したように、冷静さを取り戻したネルシーニョは自分の態度と行動を悔い、考えを改めたのである。
しかも今回の辞任騒動がどのような影響を与えるかを理解し、戻ることへの覚悟を感じた吉田ダイレクターは3日、ネルシーニョの復帰を決断した。
天皇杯2回戦前日ということもあり、監督の復帰がすぐ選手に伝えられたわけではなかったが、31日の辞任表明以降も選手たちは思いのほか冷静だった。もちろん指揮官の突然の辞任には衝撃を受けただろうが、それがチームを根底から揺るがすほどのエネルギーがあったかと言われれば、決してそうではない。
過去に監督の交代を経験している選手たちに話を聞くと「残留争いに苦しんでいるならまだしも、そういうわけじゃないし、ACLやナビスコとタイトルの懸かった大会もある。今までの監督交代とは意味が違うし、選手たちは何も変わらない」という声が聞こえた。
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