さらに強まったチームの結束
天皇杯2回戦の筑波大戦を終えた翌日(5日)、練習前に吉田ダイレクターから“ネルシーニョ復帰”が選手たちに伝えられ、この日から指揮官はグラウンドに戻った。上記した選手の言葉通り、様々な大会へ高いモチベーションを抱き、チーム自体が同じ方向を向いているため、選手たちは辞任撤回もまた冷静に受け止めることができたのかもしれない。
もちろん、今回の一件には様々な感情を抱いたとは思う。ただ、ここ数年はタイトルを取り続けてきているチームだからこそ、タイトルの重みと、タイトルを取るチームが一枚岩でなければならないかを知る。彼らの「タイトルに懸ける想い」は、ピッチ外の喧騒に流されるほど脆弱ではなかった。
その気持ちが顕著に表れたのがヤマザキナビスコカップ準決勝第1戦だ。
「ここで負けたら、『監督辞任騒動のせいだ』と言われるから、絶対に勝たなくてはいけなかった」
4-0という快勝を収めた直後のミックスゾーンでは、多くの選手はそんな言葉を口にした。
ネルシーニョは勝利を貪欲に追い求める。その勝利に懸ける飽くなき執念が別の形で表れてしまったのが、そもそも今回の辞任騒動の原因だ。
さすがのネルシーニョといえども、ヤマザキナビスコカップで見せた効果や影響を見据えて一連の騒動を引き起こしたわけではないだろうが、リーグ戦で首位を走る横浜FMに対する見事なまでの勝利は、結果的に選手たちの発奮を促し、チームの結束をさらに強めたことを印象付けた。
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