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Jリーグ 11年前

手倉森誠監督の覚悟――6年目を迎えるテグ流マネジメントの真髄(前編)

text by 戸塚啓 photo by Kenzaburo Matsuoka / editorial staff

選手の使命感と責任感を駆りたてる

ベガルタサポーター
団結し前へ進むベガルタ仙台【写真:松岡健三郎】

「監督1年目に『感動一体』というスローガンを掲げたんですが、そこには二つの意味を込めました。一体になって戦うことで感動を与えられる、というのが一つ。もう一つは、ピッチの内外で周りのことを『感』じて『動』くんだということ。一緒に涙を流し、悔しがり、ときには言い合ってきた。人間味に溢れたクラブになってきたからこそ、震災に見舞われても地域の人たちの痛みを分かち合い、復興の先頭に立つんだと全員が団結できたんです」

 Jリーグでズバ抜けた一体感は、既存のメンバーによる結束によってのみもたらされたわけではない。継続性を担保しつつ、手倉森はピンポイントで補強を進めていった。

「一つのクラブしか知らない選手の集まりだと、自分たちの器やルールでしか物事をとらえられない。そこに他チームから選手が入ってくると、考え方が拡がるんですよ」

 そう言って手倉森は、平瀬智行の名前をあげた。現在はクラブのアンバサダーを務める平瀬は、08年から3シーズンにわたってベガルタでプレーした。

「平瀬は前所属チームの神戸でやっていた学校訪問を、ウチに落とし込んでくれた。選手も加わっての地域貢献活動が、そこから本格化したんです。ヤナギ(柳沢敦)は去年の震災発生時に、自らボランティア登録した。いまこのチームに、角田(誠)と上本(大海)がいなかったら? どれだけおとなしいんだって感じでしょう(笑)。違う価値観を持った選手を加えることで、組織が硬直しない。僕はこのチームで長く監督をやっているから、そういう狙いを持たないとマンネリ化する。それは明確なプランとしてある。チームの雰囲気作りは、いつも意識していますね」

【後編へ続く】

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