フットボールチャンネル

Jリーグ 11年前

惨敗続くACL。勝利のためにJクラブは“弱者”であることを認めよ

text by 田中滋 photo by Kenzaburo Matsuoka

「自分たちの方が弱い」と認めることは恥ではない

 日本代表がアジアの舞台で見せているような、パスを丁寧に繋いで相手を崩せるのなら崩したいと誰もが思っているだろう。しかし、それで得点できる可能性と、パスを奪われることで生まれるカウンターで失点するリスクとを、予断なく、正確に、天秤にかける必要がある。

 代表でもセンターバックの人材難が叫ばれている以上、ムリキの突破を1対1でも止められるセンターバックは残念ながらJリーグには居ないように思う。つまり、強者は相手(広州恒大)であることをハッキリ認めた上で戦略を立てる時期が来ているのだ。

 勝負の世界には、必ず強者と弱者が存在する。勝負は自分たちの立場を正確に認識するところから始まるものだ。その意味では、いまの日本代表にも若干の危うさを感じるのだが、正しい分析に基づいた上で「自分たちの方が弱い」と認めることは恥ではない。

そして、弱者と認めたからと言って、人数でゴール前を固めるだけが戦略ではないはずだ。それは手段であって目的は別にある。最大の目的は相手の長所を消すことだ。

 最も効果的なのは、敢えて試合を膠着させる技術だ。試合を壊してしまう、あるいは殺してしまうとも表現される。一例をあげると、Jリーグでは、アクチュアルタイムを増やすことが奨励されているが、それとは逆にプレーしている時間を減らし、相手にペースを与えないことを目指すのである。その上で隙をうかがい、相手が焦れたところでゴールを奪うのだ。

 それは屈辱的な選択なのかもしれない。もちろん、Jリーグで戦っているように、自分たちのサッカーを貫くことで勝利を手にできれば最高だ。しかし、そろそろ“自分たちのサッカー”に固執するのは止めても良いのではないだろうか。大事なのは勝利だ。それ以上でもそれ以下でもない。

【了】

関連リンク

“広州の奇跡”に挑むACLベスト4。柏は“倍返し”出来るか?
広州戦で突きつけられたJリーグの現実。ACL制覇のための“日程変更”は本当に正しいのか?
試合の分岐点は“50分”。過密日程だけでない、柏が広州に大敗した要因
太陽王への道

1 2

KANZENからのお知らせ

scroll top