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完成しかけたチームを“壊した”ブラン監督。PSGの新システムは吉と出るか?

text by 小川由紀子 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

活かされないカバーニとパストーレ

パストーレ
パストーレほどの戦力を使えないのは、非常にもったいないことだ【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

 このシステムにはすでにいくつかの問題点がある。

 まず、カバーニの能力が十分に生かされていないことだ。指揮官自身「彼はより真ん中でプレーするのを好むし、おそらくその方が彼の力を発揮できるだろうが、全体のバランスを考えた上でやむを得ない」と認めている。

 ただ、右サイドに据えられたカバーニがここまで目立った働きをしているのは、バックラインまで惜しみなく戻る守備への貢献くらいで、フィニッシャーとしての凄さを発揮する機会はほとんど与えられていない。

 そしてもう一人、このシステムの犠牲になったのがパストーレだ。アンチェロッティも当初、彼をアタッカーの後ろで起用していたが、頻繁に下がるイブラとの共存に悩んで力を出せずにいたため、サイドにスイッチしたところ、持ち前のビジョンの良さ、パス精度、さらには見かけ以上のスタミナで守備をヘルプと、才覚を発揮して勝利に貢献した。

 ところが、現在の4-3-3になってからパストーレの出番は激減。8節のトゥールーズ戦ではついにチームシートからも名前が消えた(メンバー落ちの理由を当初クラブ側は「監督の意向」と発表したが、後になってから「練習中の怪我」に変更している)。

 パストーレの良さが現行のシステムでは生かされていないことについて、イタリア人記者がブランに質問をぶつけたところ、指揮官は「システムのせいだとは思っていない」と、彼自身のコンディション不良であると説明した。

 この答えに納得した記者はほとんどいなかったが、パストーレほどの戦力を使えないのは、非常にもったいないことだ。

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